グルテンフリーという言葉をよく聞くようになりましたが、そもそも小麦のグルテンの危険性はどのようなものなのでしょうか。今回はグルテンの危険性に触れながら小麦食品をやめるべき5つの理由を医学的根拠に基づいてまとめました。
①小麦は最強の「食欲増進剤」
グルテンは胃の中にある酵素や胃酸と反応して、様々なポリペクチド(タンパク質)に分解されるのですが、その中の一つ、エクソルフィンという麻薬のようなポリペクチドが厄介者なのです。
これが体内に吸収されて、脳にあるモルヒネなどの麻薬の受容体でもあるオピオイド受容体に結合します。すると、多幸感を感じるようになり、次第にそれが小麦依存性に転じてしまうのです。
さらにはグルテン由来のエクソルフィンは食欲を増進させる力があります。そのため小麦を食べることで、必要以上に食欲が掻き立てられ、ついつい食べ過ぎてしまうのです。食べ終わった後も幸福感に包まれるので、それが癖になって小麦依存症になってしまいます。
さらに現代社会では小麦製品がどこでも売っているので小腹が減ってはついついお菓子やパンなどに手を出して間食してしまいやすい状況にあります。夜食としてラーメンやケーキなどを食べたくなるのもエクソルフィンによる依存症が大きな原因の一つと考えていいでしょう。
②グルテンが引き起こす認知症・アルツハイマー
小麦のグルテン過剰摂取は認知症にも繋がりやすいと言われています。
それはなぜかというと、グルテンの構成成分の一つ「グリアジン」が引き金となって、細胞と細胞の接着剤であるタイトジャンクションが緩み、その隙間から、有害物質やバクテリアが体内に入ってきてしまうからです。
具体的に仕組みを説明すると、「グリアジン」が細胞膜に刺激を送り、細胞からゾヌリンという成分を分泌させるのですが、ゾヌリンには、細胞と細胞の隙間をあけ、通過をよくする作用があります。これは本来悪いことではなく、小腸で隙間をあけることによって必要な栄養素を入れる機能なのですが、毎日のように小麦をとることでゾヌリンが過剰に分泌されるようになると、この隙間が開きっぱなしになり、本来は侵入を阻止するべき有害物質やバクテリアまでも小腸経由で血管に入ってきてしまうのです。
これがいわゆる「腸もれ」=リーキーガットの状態で関節痛、胸やけ、息切れ、吐き気、腹痛、抜け毛・もろい爪、お腹の張り・消化不良、不眠症、記憶力低下、集中力低下、不安感、まとまらない考え、疲労感、下痢・便秘、神経過敏、食欲低下、ニキビ、じんましん、喘息、アトピー性皮膚炎などの原因となります。
ゾヌリンの影響は腸だけにとどまらず、血管に入ったゾヌリンは血液にのって脳にまで達します。脳にもまた不要なものや危険なものの侵入を阻止する「血液脳関門」という関所のようなバリア機能を持っているのですが、ゾヌリンが過剰に分泌されると「血液脳関門」にまで影響を及ぼし、バリア機能が低下します。すると有害物質が脳内に入り込み、炎症を起こしてしまうのです。すでにいくつもの論文で明らかにされているように、脳内炎症は認知症やアルツハイマーに繋がってしまうのです。
これに関してアメリカのメイヨー・クリニックでのショッキングな調査結果があります。同クリニックでセリアック病(グルテンによる自己免疫疾患)の診断を受けて間もない患者13人に対して調査を行ったところ、全員が認知症も発症しており、13人中9人が脳機能の悪化の進行で亡くなりました。そして前頭葉生検や脳の死後調査を行ったところ、小麦のグルテン摂取以外に病気の原因と考えられるものがなかったという衝撃的な結果が出たのです。
グルテンそのものが悪影響を及ぼすというよりは、グルテンの構成成分の「グリアジン」が引き金となって、小腸や脳のバリア機能である関所が開きっぱなしになり、有害物質が過剰に取り込まれ、病気になりやすくなるというわけですが、小麦には人を依存症にさせる魔力があるために、かなり危険な食品の一つと言えます。
③小麦は肥満の原因
「グルテン」と「肥満」の間には直接的な因果関係はありませんが、グルテンによる依存症が肥満をもたらしていると言うことができます。小麦製品は消化時の血糖値の上昇を示す「GI(グリセミック・インデックス)値」が高い食品ばかりです。血糖値が高ければ高いほど肝臓から放出されるインスリン量が増えますが、過度の高血糖値とインスリン量は内臓脂肪を増やす原因になります。
どういうことかというと、インスリンは血液中のブドウ糖を回収し「グリコーゲン」に変えて肝臓や筋肉に蓄積する役割を持っているのですが、肝臓で蓄積されず余ったブドウ糖を中性脂肪として脂肪細胞の中へ取り込む仕事もします。
つまり、高血糖のものばかりを食べると内臓脂肪も増えてきてしまうのです。
小麦の依存症ゆえに小麦製品を常食し、これが何度も繰り返されると肝臓、腎臓、膵臓、大腸や小腸にまで内臓脂肪が蓄積されて、ビール腹ならぬ小麦腹になってしまいます。
小麦を食べるとお尻や太ももの脂肪も増えますが、こうした部位の脂肪は比較的問題になりません。これに対して内臓脂肪は違います。この脂肪には多くの炎症を引き起こす特異な性質があります。炎症の産物として異常なインスリン反応、糖尿病、高血圧、心臓病を引き起こします。内臓脂肪によって誘発されると確認される病気は増えており、リウマチ性関節炎、結腸がんにまで拡大しています。
つまり、小麦腹は見苦しいだけでなく、とても危険な状態でもあるのです。
これは小麦に限った話ではありません。小麦製品と同じくGI値が高くて依存性のあるものといえば「白砂糖」が挙げられますが、白砂糖と小麦が合わさったお菓子や菓子パン、ケーキなどは最も常食を避けるべき食品と言ってもいいでしょう。といっても、それらを完全に断つのは現代人には至難の業です。私もそれはできないです(笑)。
ただ、食べるにしても量はほんの少しにして毎日摂取は避けるのが望ましいですね。あとは穀物を摂るにしても、GI値が比較的低い玄米を主食にするようにするとか、間食をするとしてもGI値が低く、なおかつ栄養素が高いナッツなどを摂るようにするといった代替案を実践してみるといいでしょう。
④老化促進もさせる小麦
小麦は老化現象さえも促進させます。これも小麦に限った話ではありませんが、高血糖値の食品ばかりを食べるとAGE(終末糖化産物)が生成されやすくなります。AGEは高齢者の体内に大量にみられるもので、動脈を硬くし(アテローム性動脈硬化)、眼球の水晶体を曇らせたり(白内障)します。つまり、老化が進むのです。
AGEが形成される作用は次の通りです。
血糖値を上昇させる食べ物を消化する→体内組織でブドウ糖の量が増える→ブドウ糖分子とタンパク質分子が結合しやすくなり、その結合体のAGEが増える
このようにAGEが増える原理はシンプルですが、一旦AGEが形成されると分解されることなくもとに戻ることはありません。
そして血糖値が上がれば上がるほどAGEは蓄積されて、老化が進みます。その結果として最初の方に現れるのが糖尿病です。そこから更に深刻化すると、神経障害、網膜症、腎症などが併発します。
AGEが蓄積されやすい高血糖食品は小麦だけではないのですが、小麦がダントツで血糖値を急上昇させることがわかっています。小麦に含まれる複合的な炭水化物はほかの炭水化物のアミロペクチンとは違ってアミロペクチンAという独特な種類で、アミラーゼという酵素によって最も分解されやすい形なのです。アミロペクチンAが分解された結果がブドウ糖なので、小麦食品はほかの食品と比べて高血糖になりやすいのです。
小麦は中毒性が強いことは先に述べた通りで、毎日のように摂取するとそれだけ老化が進みやすくなるということです。
⑤肌荒れ・ニキビの原因も小麦
皮膚は身体の内部作用を表す鏡だということは皮膚科の常識です。小麦は先に述べたAGE(終末糖化産物)を作って肌のしわや張りを失くすなどの皮膚の老化現象を促進することが分かっています。しかし、小麦が皮膚に及ぼす影響は老化以外にもあります。
例えば、ニキビもまた血糖値とインスリン量を上げる食物が原因で、小麦を毎日のように摂るとニキビになりやすくなります。
ほかにも、疱疹(ほうしん)状皮膚炎(DH)は小麦のグルテンに対する免疫反応が腸管以外の場所で現れるもので、痒みのある発疹で、治りにくい上に皮膚を変色させたり、あばたが残ったりすることもあります。最もできやすい場所は肘、膝、尻、頭皮、背中で、多くの場合左右対称に発症します。
他には、口内炎、皮膚血管炎、黒色表皮腫、白斑、乾癬(かんせん)、皮膚筋炎などが小麦グルテンが原因の皮膚疾患として知られています。
皮膚は身体の内部作用の鏡なので、こういった皮膚の異常現象が起きている時は内臓などの異常もあることがほとんどです。
以上をみれば、グルテンが多く含まれる現代の小麦食品は危険性がかなり高いことが分かります。
他にも小麦の過剰摂取による弊害はあるのですが、小麦の危険性を示すにはこれで十分だと思いますので、今回はここまでにしておきます。
しかし今回述べたことは現代に広く流通しているパンに限ります。現代の小麦は第二次世界大戦後にアメリカから世界中に広まり、圧倒的なシェアを占めているのですが、戦前までよく生産されていた古代小麦(スペルト小麦など)はグルテンの量が少なく、GI値も低いので比較的健康的な小麦といえます。
あまり流通はしていませんが、古代小麦を販売している通販会社もありますし、古代小麦で作ったパンを販売しているパン屋もあります。私も近所のパン屋が古代小麦パンを売っているので、たまに食べますがそれもまた食べ応えがあっておいしいですよ!パンなどをどうしてもやめられない人は古代小麦を代用品として食べるのもいいでしょう。検索して探してみてください。
スペルト小麦などの古代小麦の話についてはまた長くなるので別の機会で記事にまとめていこうと思います。
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