コロナショックで中国経済は崩壊?共産党はどうなる?

今回は新型コロナウイルスの影響で危機を迎えつつある中国の政治経済の行方に迫ります。

 

そもそも中国経済は斜陽を迎えていたので、今回のパンデミックの衝撃は経済崩壊の決定打となり得ます。共産党体制にも激震が走っています。

 

歴史を遡ってみると、中国の歴代王朝も疫病の大流行で国が滅びたり、権力者が影響力を失ったという歴史があります。

 

疫病で滅びた歴代王朝と危機を迎えた毛沢東

 

中国の疫病の歴史をみてみると、既に紀元前から甲骨文に刻まれていて、殷周時代にまでさかのぼることができます。周初から漢代に至る「大疫」の記録をみてみると、「死者万数」「人多死」というような多くの死亡者が出たことを示す文言が繰り返し出ています。

 

周王朝が滅亡したのも疫病の拡大が一つの大きな要因ともいわれています。また、後漢末期にも疫病と凶作が重なり、民衆が苦しむ中、太平道の教祖、張角が道教的な治療法によって病を癒すカリスマ的存在として民衆の支持を集めました。その張角を中心に黄巾賊が結成され、黄巾の乱が起こります。この反乱は結局鎮圧されてしまいますが、この乱によって後漢は完全に衰退し、三国志時代を迎えることになります。

 

ほかにも隋の末期には7回も疫病が大流行し、滅亡の一因になりました。中国を支配下に収めたモンゴル帝国も中国からヨーロッパにまで版図を広げようとしましたが、ペストに苦しめられ、帝国崩壊がもたらされました。なお、ペストは14世紀のヨーロッパでも猛威をふるってヨーロッパの人口の約3分の1を感染死させましたが、そのペストはモンゴル軍によってもたらされたと考えられています。

 

明王朝でも、末期にペストと天然痘が大流行して1000万人近くが死亡したとされています。弱体化した明は農民の反乱(李自成の乱)によって滅びます。

 

歴史的にみて疫病というのは大国をも滅ぼす力を持っているわけですが、新型コロナウイルスの蔓延の被害を受けている現代の中国は今後どうなるのでしょうか。

 

新型コロナウイルスが与える中国経済への影響

 

そもそも中国経済というのは新型コロナウイルスの蔓延以前に危機を迎えつつありました。

 

ロイターの記事(2019年7月18日付)が、報じているように、ワシントンに本拠を置く民間のグローバル金融業界団体「国際金融協会(IIF)」の試算によると、中国の企業、家計、政府の負債総額は、2019年の第1四半期にGDPの303%に達しています。その総債務額は40兆ドル超で、全世界の政府債務の約15%に相当するといいます。

 

財政状況的にいつ破綻してもおかしくないわけですが、新型コロナウイルスの蔓延によって、中国の財政を支える大きな財源の一つ、観光収入も激減することが予想されています。中国文化観光省によれば、2018年度の中国の観光収入は国内旅行者と海外からの旅行者を合わせると、5兆9700億元でした。当時のレートで計算すると100兆円近くになります。

 

近年の中国は海外からのインバウンド数も安定しており、2018年度は中国本土だけで6290万人、香港は2926万人、マカオは1849万人でした。合わせると、延べ数で1億1065万人になります。さらにインバウンドにおける世界の観光収入ランキングは中国本土・マカオ・香港を合わせると毎年のように10兆円を超えており、アメリカに次ぐ2位を維持していました。

 

中国の観光産業における雇用数は約8000万人で、中国雇用者全体のうち約10%を占めます。

 

中国の観光業がどれほど中国経済にとって重要なのかが分かりますね。

 

昨年から始まった香港デモでも香港への観光客は激減し、観光業に大ダメージを与えましたが、今回の新型コロナウイルスの蔓延によって、更に海外からのインバウンドだけでなく国内旅行者も激減することが考えられます。具体的にどれほどのインパクトがあるのかはまだ分かりませんが、中国の民間のシンクタンク「恒大研究院」は、新型コロナウイルスの感染拡大による中国経済への影響をまとめたリポートを公表しており、それによると、小売り・飲食・旅行などの産業の損失額は春節の連休中だけでも1兆人民元以上になるといいます。日本円にして約16兆円です。

 

さらに、影響は建設業や金融業など幅広い分野に及ぶとしています。

 

そもそも中国の金融に関しては昨年の銀行ストレステスト(健全性審査)で中国の大手銀行30行の不良債権比率が5倍に上昇するシナリオが想定されていました。それほど金融業界も危うい状況だったのですが、それに追い打ちをかけるように新型コロナウイルスが感染拡大しました。

 

中国国家金融・発展実験室のアナリスト、ユー・チュン氏は「金融業界は大打撃を受けている。新型コロナウイルス感染拡大はすでに中国で最も活気のある中小企業にダメージを与えた。長引けば多くの企業が行き詰まり、ローンを返済できなくなる」と指摘しています。

 

金融業界だけでなく不動産業界も危機を迎えています。

 

中国の不動産市場はバブル状態でしたが、2019年には景気が減速し始めており、バブル崩壊も近いのではないかと囁かれていました。そんな時にコロナウイルスの感染拡大で、不動産市場は追い打ちを受けている模様です。開発業者は販売拠点を閉め、住宅の買い手は新居探しを先送りしているからです。

 

そればかりではありません。中国では約12兆元(約188兆円)とも言われる市場規模を有する不動産投資信託(REIT)という巨大市場があるのですが、それもコロナウイルスの蔓延によって大きな痛手を受けることが考えられます。

 

REIT(リート)とは、投資法人が投資家から資金を集めて複数の不動産に投資し、賃貸収入や不動産の売却利益の一部を配当金として投資家に還元するという金融商品のことで、投資法人はREITを通してホテルやオフィスビルを建てて、賃料を得ていました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって観光客が激減することで、特にホテル系のREITは大ダメージを受けることになります。

 

となると、REIT市場も崩壊する可能性が高まり、中国経済はさらに混乱状態になることが予想されます。

 

以上のような様々な危機が到来しているのですが、新型コロナウイルスだけでなく、米中貿易戦争・香港デモという三重苦があるので経済はかなり苦しい状態です。中国経済は果たして、未曽有の危機に耐えられるのでしょうか。

 

中国共産党の行方は?

 

ここからは政治の話をします。新型コロナウイルスの影響で、経済だけでなく中国の体制そのものが揺るがされているようにも見えますが、果たしてどうなるのでしょうか。

中国は歴史的に権力闘争が、非常に激しい国ですから、習近平体制に反旗を翻す勢力が現れてもおかしくはありません。習近平は腐敗撲滅キャンペーンによって不死身の帝王と言われた江沢民の派閥の大半を摘発することで政界から追い出し、江沢民の院政を退けることに成功しましたが、次は逆に習近平が狙われる可能性があります。

前任の胡錦涛の時代に、それほど注目されていなかった習近平が今のようにこれほど権力を集中させるとは、誰も想像していなかったでしょう。逆に今それほど注目されていない人物が政変を起こすことで、習近平を今の権力の座から引きずり降ろす可能性も否めません。

例えば、共産党序列第二位の李克強がその座を狙っているのではないかと考えられます。元々、胡錦涛と同じ中国共産主義青年団出身の李克強は胡錦涛の後を継ぐことを期待されていましたが、院政を敷いていた江沢民の策謀により、習近平が抜擢されることになりました。江沢民は胡錦涛や李克強を筆頭とする共青団出身メンバーの影響力をそぎ落としたかったが故に、あえて習近平をトップに就かせるように策謀を巡らせたのですが、皮肉にもその習近平の腐敗撲滅キャンペーンによって江沢民は事実上、政界から追い出されました。

この辺りの詳細を話すとなるとすごく長くなるので今回は割愛しますが、元々、超がつくほどのエリートで将来トップに就くことを期待されていた李克強が今後共産党のトップに取って代わる可能性も十分にあると私は考えています。習近平と李克強は権力闘争しているとかしていないとか様々な憶測がありますが、そもそも習近平と李克強との間では経済政策におけるスタンスにかなりの違いがあるので、少なくとも思想的な対立はあります。

習近平は党が全てを決めるという毛沢東的な考え方で、経済も党主導の一帯一路構想で中国経済圏を大きくしようとしています。中国は表面上は市場原理を導入していますが、やはり重大なことの最終決定権は共産党の幹部が握っているわけですから、共産主義的な色合いはまだまだ強いです。共産主義というと語弊が生じるかもしれないので、トップダウンの指示で政治経済を動かす「国家資本主義」と言ったほうが適切かもしれません。習近平はそれを更に強めようとしている模様です。

一方、李克強は実はそのような考え方ではなく、どちらかというと経済を市場原理に委ねようという一般的な資本主義寄りの考え方を持っています。李克強は北京大学で経済学を学んだだけでなく、国務院副総理時代から国家経済を担当してきました。だから経済の知見は人一倍あって、国内に山積する経済的な問題に関して強い関心を持っています。それらの問題を優先的に解決しないと中国の国力は落ちる一方で、現在の一党支配体制が維持できないと考えているのです。「国営企業の構造改革と市場化・民営化」という彼の主張からも習近平との考え方の違いの大きさが分かるかと思います。

習近平の一帯一路構想は中国経済圏を更に大きくしようという構想ではありますが、中国国内の貧富の差などの経済的な問題を根本的に解決できそうにありません。もし一帯一路政策が成功したとしても中国の国営企業や実質共産党がコントロールする民間企業が大きくなるだけだからです。一方、広がる貧富の差などの国内の問題を「国営企業の構造改革と市場化・民営化」などで、まずは解決しようというのが李克強の考え方です。

こういった考え方の対立があるからと言って、両者が権力闘争している証拠もないので断言はできませんが、「あわよくば自分がトップに・・・」と考えていても不思議ではありません。そう考えている人は他にもいっぱいいるはずです。

 

習近平によって実質的に政界から追い出された江沢民財閥も復権を目指している模様ですから、今回の新型コロナウイルスの蔓延をチャンスだと捉えているかもしれません。過去の記事で取り上げましたが、香港デモも本質的には習近平と江沢民財閥の代理戦争の様相を呈しているので、新型コロナウイルスの蔓延を契機に、江沢民財閥が何か動くかもしれません。

 

歴史的に疫病は国家を滅ぼしたり、体制を転覆するほどの影響力があるわけですが、今回はどうなるのでしょうか。少なくとも経済的には大ダメージを受けることは必至で、習近平体制も揺らいでいることは確かです。一部の住民らは警察車両に木材を投げつけるなどして抗議したり、ネットでは新型コロナウイルスの感染拡大を食い止められなかった中国共産党への不満の声が拡散されています。

 

一党独裁の弊害がここにきて表面化しているのではないでしょうか。なんにせよ、中国が転換期を迎えているように見えるのは、私だけではないと思います。

事態がどう転ぶにせよ、日本にも多分に影響があるので、他人事ではありません。中国の動向に今後も注視していきましょう。

Digiprove sealCopyright secured by Digiprove © 2020
スポンサードリンク



コロナショックで中国経済は崩壊?共産党はどうなる?」への2件のフィードバック

  1. 中国共産党政権は間もなく崩壊するでしょう。中国共産党は完全に嘘をつき中国のメディアも嘘をつきました。香港問題が厳しく問われます中で中国が国家安全保障法を上げました一方でアメリカのトランプ大統領が中国共産党などに制裁措置を受ける事になりました。新型コロナ後の中国共産党は後戻りできません。習近平が倒れて胡春華政権に変われば、中国共産党政権は完全に終わります。中国共産党政権には新型コロナウィルス感染を巻き散らし全世界に損害賠償請求訴訟を受ける事になりました。中国共産党政権は後戻りできません。中国共産党は成り立たないと思います。世界は日本化し中国共産党は世界地図から消滅するでしょう。

  2. これは当然の事です。中国共産党が国家安全保障法を上げました一方でアメリカのトランプ大統領が国家安全保障法は中国を1国1制度を上げましたのがルール違反で中国共産党らに厳しい制裁措置を受ける事になりました。中国共産党はスポーツイベント中止は全世界に損害賠償を受ける事になり代償を払う事になります。このままでは中国は習近平が倒れ今年秋に胡春華政権に変わり中国共産党は厳しい審判を受け中国共産党らに死刑判決を執行されます。中国共産党政権の大罪は過去の中国共産党時代の戦争プレイバックに過ぎず重い制裁措置を執行されます。中国共産党の未来は成り立たないと警告致しました。これからは日本化が強まり来年の東京五輪開催で日本が金メダリストが続出するでしょう。中国共産党は反省し責任を問い謝罪すべきです。

成島英夫さん中国共産党は成り立たないと思います へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。