香港デモは習近平vs江沢民一派(上海閥)という代理戦争である

香港デモの本質は、香港市民vs中国共産党ではなく、習近平vs江沢民一派といえます。なぜそう言えるのかを説明していきましょう。

 

習近平vs江沢民一派の経緯

 

習近平と江沢民一派の争いが始まったのは習近平国家主席による中国内で蔓延していた汚職を撲滅するキャンペーンが始まる前後でした。

 

そもそも江沢民は実質中国トップに君臨していた鄧小平の跡を継ぎ、1989年から2002年まで総書記を務めていました。そのあとは胡錦涛が継ぐことになるのですが、江沢民は院政を敷いて、その影響力を継続させました。実質20年以上中国を動かしてきた江沢民の周りには政府の高官や国営企業の幹部クラスの人たちが虎の威を借る狐のように江沢民の権力を利用して、巨額の賄賂や汚職金を得て、権力とお金を欲しいままにしてきました。

 

その江沢民一派は江沢民が元上海市長ということもあり、俗に上海閥と呼ばれます。やりたい放題に中国をかき回してきた江沢民一派でしたが、それは胡錦涛の跡を継いだ習近平時代から風向きが変わります。江沢民によって影響力を抑え込まれていた胡錦涛は習近平と共闘関係を結ぶことで、江沢民に一矢を報おうとしたのです。

 

 

江沢民vs胡錦涛・習近平の争いに火ぶたが切られたのは、重慶市副市長だった王立軍(ワンリージュン)が政治亡命を求めて、アメリカ総領事館に駆け込んだ事件の時でした(2012年2月)。この騒動により重慶市長の薄熙来(ポーシーライ)一族の不正蓄財(7200億円)とイギリス人実業家暗殺などが明るみに出たのです(薄熙来事件)。

 

実はこの薄熙来はただの市長ではなく、国務院副総理などを務めた薄一波を父に持ち、そのため幅広い人脈と影響力を持っており、中国軍部トップの徐才厚(シュカイホウ)と中国司法機関のトップであり、共産党内の序列9位であった周永康(ヂョウヨンカン)とも深い関係にありました。

 

実は徐才厚と周永康は薄熙来をトップに据えるべく、政変を画策して胡錦涛の後継者になることが確実視されていた習近平を引きずり降ろそうとしていたのです。

 

周は薄の能力と実力を高く評価しており、後継者にしようと考えていました。簿を中央政法委員会の書記に就任させたら、捜査機関を動員して習近平の汚職を明らかにし、追い落としを図ろうとしていたのです。それに徐才厚も支援していたという構図です。

 

しかし、薄熙来の不正が明るみに出て、芋づる式に自身の不正も明らかにされることを恐れた周永康は指導部の了承を得ずに配下の武装警察を動かして、薄熙来に資金提供していた企業家の身柄を確保して口封じを行おうとしました。慌てた指導部は軍を出動させて、身柄を取り戻そうとし、周率いる武装警察と軍はにらみ合いが続きました(2012年3月)。結局、軍事クーデターにまでは発展しませんでしたが、周はこの一件で失脚してしまいます。

 

周永康は石油や天然ガスを独占する国有石油企業への影響力を背景に、親族に不正な便宜を図ったほか、支配下の司法機関を使って、処罰や摘発に手を加えるだけでなく、見逃す見返りとして多額の賄賂を受け取っていたことが後で明らかにされました。こうして得た不正資金を政界引退後も白日の下に晒されないためには関係が近い薄熙来を後任として自身の汚職に目をつぶってほしかったのです。

 

徐才厚も周永康と同じ穴のムジナで、のちに収賄の容疑で習近平により訴追されました。

 

そして注目すべきは薄熙来も徐才厚も周永康も、あの江沢民に可愛がられていた、いわゆる江沢民一派(上海閥)でした。

 

この政変を企てていた高官の相次ぐ失脚劇が、胡錦涛の江沢民に対する反撃の始まりで、その数か月後に習近平は国家主席・総書記・軍事委員会主席になることで中国のトップに君臨し、胡錦涛念願の「江沢民一派排除」を引き継ぎます。

 

そして習近平政権が始まって間もないうちに中国内の汚職撲滅キャンペーンが始まりました。標的はもちろん江沢民一派です。

 

習近平は「ハエ(下っ端)もトラ(高官)も退治する」と公言し、いままで免罪符を持っていたも同然な高官を次々と捕まえて、わずか一年で15万人を超える中国共産党員を腐敗で検挙しました。それだけでなく経済犯として海外に逃亡した人物数百人を追いかけて逮捕しています。その中でも大物は江沢民一派で軍トップであった郭伯雄で、彼を収賄容疑で党籍剥奪処分しました。郭伯雄は中国国内の映画配給など多くの利権を持つだけでなく、「蛇頭」と呼ばれる反社会組織の裏ボスとしても知られる人物です。

 

これに対し、江沢民が黙っているわけがないと思うのでしょうが、習近平は江沢民の親族を実質人質にしていると言われており、江沢民もそれに屈服したとみることができます。実際、息子の江綿恒(チアンミエンホン)の米国への不正送金の証拠をつかみ取っているようで、いつでも息子を逮捕できる状態であることをほのめかしているのでしょう。そのほか、江ファミリーの不正を突き付けられ、不死身の帝王であった江沢民は今回ばかしは窮地に追い込まれたのだと思われます。

 

習近平は江沢民自体を失脚させてしまうこともできたのでしょうが、それでは過去の中国を否定してしまうことになりますし、中国共産党そのものが揺るがされてしまいます。そのため習近平は江沢民を半ば生き殺しのようにしたまま、たった2年で胡錦涛が前任の10年をかけてもできなかった江沢民の影響力をほとんど排除することができました。

 

反旗を掲げる江沢民一派

 

しかし、江沢民一派もやられっぱなしではありません。

 

2015年に起こった中国株の大暴落も江沢民一派が仕掛けたものだと言われています。中国政府の金融捜査当局は、先物取引での悪意のある空売りが急落を招いたとみて、上海のある貿易会社に捜査が入りました。その貿易会社に大量の資金を流して空売りを仕掛けさせたのが、「習近平の反腐敗キャンペーンによる逮捕を恐れて米国に逃走した上海閥重鎮の娘婿だった」(北京の共産党幹部筋)といいます。

 

その重鎮の名は戴相龍で、中国人民銀行(中国の中央銀行)総裁や天津市長などを務めた党の大幹部で、2013年に政界引退した長老指導者です。この人物もまた江沢民一派で、戴は2015年初め習近平指導部が主導する反腐敗闘争の網にかかったという報道がありました。それに対抗して戴は貿易会社を通じて株の空売りをして株価急落を招いたと考えられるのです。

 

中国政府は対応に追われ、株の空売り禁止をしたり、国営メディアを通じて株式の購入を促したり様々な策を講じて、何とか持ち直しました。

 

そういった経済攻撃だけでなく、習近平は何度も暗殺されかかっています。習近平の暗殺未遂数は歴代トップクラスだそうで、総書記になる前に2回、一期目の任期の5年間に10回。二期目に入ってからは2回あったようです。(参考:『習近平の「暗殺未遂数」は歴代トップクラス』)これらも江沢民一派によるものだとみていいでしょう。

 

こういった習近平と江沢民一派の争いは今も続いており、その脈絡の中で起きているのが「香港デモ」と考えることもできるのです。

 

様々な策謀が交錯する香港デモ

 

香港デモは香港と台湾の間での逃亡犯引き渡し協定をきっかけに起きました。台湾人を香港の人が殺したのですが、香港にいる犯罪人を捕まえることができませんでした。その弊害をクリアするために逃亡犯引き渡し協定を結んだのですが、中国からすれば台湾は自国の一部です。台湾とその協定を結ぶのであれば、本国である中国と香港の間でも逃亡犯引き渡し協定を結ばなければならないという圧力が来たのです。

 

中国共産党寄りであった香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は香港と中国本土間の協定を結ぶことにし、それが香港市民の怒りを買ってデモに発展しました。

 

習近平からすれば、香港に巣食う江沢民一派(上海閥)を不正摘発で逮捕できるようになるので好都合な協定です。江沢民一派からすれば協定自体は不都合ですが、デモが激化して長引けば習近平政権が国際非難を浴びるようになるので好都合な話です。香港は事実上マネーロンダリング(資金洗浄)の最適の場であることは公然の事実ですから、江沢民一派だけでなく、それと繋がりのある米民主党、ウォール街などにとっても同協定は不都合といえます。

 

同協定自体はラム長官が撤回しましたが、それでもデモは終わりそうにありません。これは上海閥がデモを扇動しているからとみていいでしょう。

 

実際、香港の抗議運動に参加しているグループには、全米民主主義基金(NED)から資金援助を受けているものがあるということも度々報じられています。このNEDとは、1983年のレーガン政権時代に「他国の政府を民主化する」という目的で設立された組織なのですが、実態は反米的な国の政権交代(もしくは体制転覆)を支援するために、その国の反対派に資金援助などを行ってきた組織でした。過去にはベネズエラやキューバなどの反政府組織に資金提供していることが判明しています。そのためNEDは「米CIAのフロント機関」とも呼ばれています。

 

 

NEDは、2014年の雨傘運動の頃から香港のデモ支援を行っていたようです。

 

また、香港の民主化運動を支持している蘋果日報(アップル・デイリー)の創業者で大富豪の黎智英(ジミー・ライ)氏もいます。黎智英氏は2014年の雨傘運動には億単位の資金を提供し、今回の香港デモでも抗議運動を強く支持しています。

 

この黎智英氏はアメリカとのつながりも強く、マイク・ペンス副大統領やポンペオ国務長官、さらにはジョン・ボルトン元安全保障担当といった「ネオコン(新保守主義者)」と会談して、「香港は自由と民主の危機にある」として米国の支援を求めたといいます(2019年7月10日付の「ブルームバーグ」(“Trump Team Sends Defiant Signal to Beijing by Meeting Hong Kong Activist”)による)。

 

そのため黎智英氏は、習近平政権から「CIA工作員」と呼ばれ非難されています。そのような背景もあって、中国共産党は今回のデモの裏にはCIAが絡んでいるとしています。

 

実際は上海閥とそれに近い民主党、ネオコン、CIA、ウォール街などの勢力が絡んでいるとみていいでしょう。トランプ大統領はどちらに加担するでもなくそれを静観している様子です。

 

上海閥の意向を受けてデモを扇動し、習近平に中国人民武装警察部隊を投入させるように誘導しているとみることもできます。そうなれば国際非難や経済制裁などが避けられないですから。しかし、習近平としてもテロなどに発展してくれれば香港に武力介入する良い口実になりますから、その機会を狙っているともみることができます。むしろ自作自演でテロを演出して、香港に武力介入して実効支配する可能性も否めません。

 

香港デモはそのような裏社会が垣間見える事件でもあります。今後も目が離せません。

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