新型コロナウイルスの都市伝説を検証。イルミナティカードで予言されていた?

「新型コロナウイルスは生物兵器だ」とか「アメリカの中国共産党を転覆させるための陰謀だ」とか「パンデミックはイルミナティカードで予言されていた」みたいな陰謀論や都市伝説が飛び交っています。

 

それらの都市伝説がどれほど信憑性あるのかを検証してみようと思います。

 

 

生物兵器説

まずは生物兵器説について検証してみます。

 

それは生物兵器が中国の武漢の病毒研究所でつくられていたのではないかという説です。その武漢の病毒研究所についてはじめに取り上げたのはイギリス紙のデイリーメールでした。デイリーメールは生物兵器については言及していませんが、2017年に設立されたこの研究所に対して米国のバイオセーフティ専門家が、ウイルスがこの施設から漏洩する可能性を2017年時点で警告していたことを明らかにしました。

 

武漢の病毒研究所は中国で唯一、最高危険度のバイオセーフティーレベル4(BSL-4)の病原体を研究するバイオ施設で、SARSとエボラの研究をしていました。

 

デイリーメールは今回の新型コロナウイルスがここから漏れたのではないかという可能性を示すに留めていますが、アメリカ紙のワシントンタイムズは「ウイルスに襲われた武漢には中国の生物戦争計画に関わる2つの実験所がある」と指摘しました。

 

同記事は中国の生物兵器に詳しいイスラエル軍事情報機関の専門家、ダニー・ショハム氏への取材を基に「武漢国家生物安全実験室」は中国人民解放軍の生物戦争のための兵器開発に関与していた可能性とコロナウイルスの研究をしていた可能性を示して、それを論拠にここからコロナウイルスが漏れたのではないかと推測をしています。

 

研究所から細菌やウイルスが漏れるというのは珍しい話ではなく、過去にも1979年に、旧ソ連の生物兵器研究所から炭疽菌が漏れて、多くの市民が死亡した事件がありました。また台湾にもバイオセーフティレベル4の生物兵器研究所があり、SARSウイルスも培養、研究しており、かつてこれが外部に漏れたこともありました。それはすぐにコントロールできたので大事には至らなかったのですが、今回の新型コロナウイルスはそれが悪い方向へと転がってしまったという可能性があります。

ただ、ワシントンタイムズの記事は証拠がなく、推測レベルのものでしたが、それがフェイスブックなどのSNSを中心に拡散され、世界中で中国が生物兵器を開発していたのではないかという憶測が広まりました。

 

それに対し、中国政府は自国で生物兵器を製造してはいないと主張しています。しかし、米国国務省による世界各国の大量破壊兵器の実態調査では、中国は生物兵器保有国だと認定されています。

 

それは根も葉もないことではありません。昨年12月、中国が生物兵器を作っていた可能性を示す事件が起こりました。それは2019年12月10日、ハーバード大学のチャールズ・リーバー博士という教授が、ボストンの国際空港で逮捕され、その後に「 21種類の生物学的研究を中国に密輸しようとした罪」で起訴されたというものです。端的に言えば、アメリカで厳重に保管されていたウイルスをアメリカの教授が中国に密輸しようとしたのです。

 

逮捕、起訴されたリーバー博士は、ハーバード大学と共に、中国の大学でも研究をおこなっていました。それがなんと「武漢理工大学」だったのです。

 

おそらくウイルス研究が盛んな武漢にアメリカの重要なウイルスを持ち込もうとしていたのでしょう。それが純粋な学問のためであるとしても犯罪であることには変わりはありませんし、もし生物兵器製造のためだったのであれば、売国行為に他なりません。

 

一方で、ワシントンタイムズが示す「生物兵器説」を否定するメディアもあります。

 

その代表例がワシントンポストです。ワシントンタイムズと名前が似ていますが、違うメディアです。ワシントンタイムズは統一教会の文鮮明が創設した保守系メディアで、ワシントンポストは1877年創刊というかなりの古株でリベラル系のメディアです。

 

そのワシントンポストの記事を要約すると以下のようになります。

 

・「ウイルスの遺伝子情報と特徴によるとウイルスが人工のものであるという証拠はない」(ニュージャージー州立のラトガース大学の生物学の教授の主張)

・「ほとんどの国では成果が上がらない生物兵器の研究を放棄している」(生物兵器専門家の主張)

・世界的にも権威があるバイオセーフティーレベル4、つまり最高レベルの施設であれば、それ相応のハイレベルなリスク管理をしているはずであり、そこから漏れるはずがない

・生物兵器は広く拡散するものではなくターゲットを絞って使われるものである一方で、コロナウイルスは拡散力が非常に高く、生物兵器としては不適切

 

これらのワシントンポストで紹介された専門家の意見は一見説得力があるようにみえます。実際はどうなのでしょうか。まず、新型コロナウイルスの遺伝子情報の解析結果、人工のものである証拠がないという意見についてですが、それとは全く正反対の意見を主張している人もいます。

 

例えば、内海新聞の発行者である内海氏は、自らSARSの遺伝子解析をするような人なのですが、同氏によると、型コロナウイルスとSARSの遺伝子情報はかなり似ており、SARSも新型コロナウイルスも人工ウイルスであると断定しています。SARSウイルスや新型コロナウイルスにはなぜかエイズやエボラのようなウイルスの成分が入っており、自然界で発生するようなウイルスとは言い難いようです。遺伝子情報の詳細は、「内海学校」というyoutubeチャンネルの動画で紹介されていますので、興味のある方は見てみてください。

 

さらに内海氏は、ロシアのウイルス兵器専門家の「SARSは天然痘とエボラのハイブリッド生物兵器だ」という主張を紹介しています。その主張のソースが明らかにされていないので、その発言があったのかどうかは分かりません。ただ、旧ソ連時代に「ビオプレパラート」という企業が「生物化学兵器」を研究開発しており、そのうちの一つに「エボラと天然痘のウイルス兵器」があった、ということはわかっています。

 

その名残はソ連崩壊後のロシアにもあり、西シベリアの研究施設では天然痘とエボラウイルスの細菌株が保管されていました。その研究所が2019年9月に爆発したというニュースを見た人もいると思います。その際、感染拡大は起こらなかった模様ですが、天然痘ウイルスの生きた標本を保管しているのは、世界でも西シベリアの研究所とアメリカ疾病予防管理センターの2カ所だけでした。

 

しかし、それはあくまで表向きの情報で、そのロシアの細菌株が中国にもたらされた可能性は高いです。スターリン死後の冷戦時代はソ連と中国は仲が悪かったのですが、ソ連崩壊後はロシアと中国は急接近し、ロシア側が中国に軍事支援していたことが明らかになっています。その一環として旧ソ連時代の生物兵器の知見を提供した可能性もあります。

 

その結果、エボラと天然痘のハイブリッドであるSARSが中国でも研究され、何らかの原因でそれが2003年に感染拡大してしまったという見方もできます。今回の新型コロナウイルスもSARSと似ていることから、SARSからの派生ウイルスと考えることもでき、SARSの研究の延長として新型コロナウイルスも研究され、それが何らかの原因で研究所から漏れて、感染拡大してしまったとみることもできます。

 

話はワシントンポストの記事に戻りますが、権威のある大学の教授が「新型コロナウイルスが人工のものであるという証拠はない」と言ったからといって、それを鵜呑みにしてはなりません。人は権威に弱いですから、権威が利用されることも往々にしてあります。私はウイルスの専門家ではありませんので、様々な専門家の意見を参考にすることしかできませんが、肯定派と否定派の意見をもとに考察した結果、人工ウイルスである可能性は、十分にあると私は考えます。

 

次に、「ほとんどの国では成果が上がらない生物兵器の研究を放棄している」という専門家の主張についてですが、それも本当かどうか怪しいものです。そもそも生物兵器というものは秘匿性が非常に高い軍事機密のはずで、最新情報は表面化しないはずです。専門家だろうがなんだろうが、国家機密を簡単に得られるわけがありません。放棄しているように見せかけて、未だに研究されている可能性もあります。

 

最後に、「拡散力が高すぎると生物兵器には向いていない」という主張についてみてみると、確かに自国民にも拡散してしまう恐れがあるため、生物兵器には向いていません。しかし、ワクチンや特効薬を開発したうえで、自国民かもしくは権力の高い人だけそれを得られるようにすれば、生物兵器として成り立つのではないでしょうか。

 

となると、中国が旧ソ連の知見をもとに生物兵器を開発しており、それが漏れてしまったという可能性も捨てきれません。

 

ワシントンポストも専門家の意見を紹介したに過ぎず、それらの専門家の意見も間違っていたり、的が外れている可能性もあります。何が正しいのかはまだハッキリとはわかりませんが、専門家の意見も私の意見も鵜呑みにせず、各々が様々な情報を考察したうえで、判断していただきたいと思います。

 

 

アメリカの陰謀説

 

生物兵器説が世界中に広がっている一方で、アメリカが仕掛けたウイルスなのではないかという説もあります。

 

例えば、イランのメディアPars Todayによると、ロシア自由民主党党首のウラジミール・ジリノフスキー氏は、アメリカが中国での新型コロナウイルスの蔓延の主な原因だと指摘したうえで「新型コロナウイルスは米国による扇動行為だ」と断定したようです。

 

個人的な反米感情がにじみ出ているようにも思えますが、このように発言する人は他にもいるようです。

 

これもまた情報源はPars Todayですが、マレーシア首相の特別補佐を歴任したマティアス・チャン氏が電話取材の際に「人工的に製造された新型コロナウイルスは、中国に対するアメリカの生物学戦争に等しい」と語ったようです。

 

その根拠として、2019年10月に中国の武漢市にアメリカ軍300人が軍事計画への参加を目的に滞在しており「この出来事からちょうど2週間後にあたる、11月に武漢市で最初の新型コロナウイルスへの感染例が報告された」と話しています。

 

また米中貿易戦争や香港デモが激化している同時期を狙って、止めの一手としてウイルスを蔓延させ、中国の体制転覆を図っているのではないかとみているようです。

 

これだけだと状況証拠に過ぎませんが、その可能性を否定することもできません。

 

 

これだけだと状況証拠に過ぎませんが、歴史を遡ると実は生物テロは珍しいことではありません。例えば、中世ではハンセン病に感染した人の血液をワインに入れて敵の国に売る、ということもありました。また近代でもアメリカ大陸におけるイギリスの開拓民が先住民であるインディアンのコミュニティに天然痘の菌に汚染された毛布を送り込むことで、感染拡大させるということもありました。

 

1940年代後半にアメリカでもグアテマラで人体実験として梅毒や淋病を集団接種しました。被験者は現地の受刑者、兵士、売春婦、孤児、精神病院の入院患者などで、少なくとも約1160人に接種したそうです。その衝撃的事実は2010年になって、ようやく明るみに出て、それを受けた当時のオバマ大統領はグアテマラの大統領に電話で公式に謝罪しました。

 

2014年にアフリカで流行した致死率50%のエボラ熱もアメリカによる生物兵器であるという陰謀説があります。コロナウイルスとは直接関係がありませんし、あくまで「噂話」なので、それに関してはここでは詳しくは話しません。気になる方は調べてみてください。製薬会社の利権が絡んでいる「噂話」です。

 

そういった観点から見るのであれば、新型コロナウイルスの件は特効薬はまだ開発されていない模様です。ただオーストラリアのメルボルンにあるピーター・ドハーティー感染・免疫研究所が新型コロナウイルスの培養に成功しており、ワクチンの早期開発が期待されています。

コロナウイルスの拡散がアメリカの陰謀説というのなら、アメリカの機関や企業が絡んでいそうですが、そのオーストラリアの研究所に関してはアメリカとの癒着関係はまだ確認されていません。

アメリカ陰謀説が正しいのだとすると、ビジネスのためというよりは中国の体制転覆を狙った政治的な陰謀ということになります。あえて武漢の研究所の近くで、ウイルスをばら撒いて、研究所からの漏洩というフェイクニュースを広げようとしたのではないかとも考えれます。

 

ただこれもまだ推測の域を出ていないので、断定はできません。あくまで「噂話」として受け取ってください。

 

イルミナティカード

 

今回の新型コロナウイルスの流行はイルミナティカードで予言されていたという都市伝説もあります。イルミナティカードは陰謀論業界では有名ですが、ご存知でない方のために簡単に説明しますね。

 

イルミナティカードとは1995年にアメリカのスティーブ・ジャクソン・ゲームズ社が発売したカードゲームで、正式名称は「イルミナティ・ニューワールドオーダー」です。世界支配を企むとされる「秘密結社イルミナティ」がモチーフになっており、策略で相手を取り込んで支配を拡大していくというゲームです。

 

イルミナティは18世紀後半に実在した秘密結社で、南ドイツとオーストリアで拡がっていました。体制側の迫害により解散を余儀なくされたとされていますが、実は友愛結社のフリーメイソンを隠れ蓑にして、まだ存在している組織だと考えられています。フリーメイソンの最上部組織がイルミナティだという人もいます。

 

そういう陰謀論好きの人のために作られたというのがイルミナティカードの表向きの顔ですが、それらに描かれているイラストが世界中で起きた事件、事故、災害を見事に予言しているとして陰謀論界で話題になりました。

 

例えば、このカードは9.11のテロを言い当てていると言われています。

 

 

9.11の同時多発テロは世界貿易センタービルとペンタゴンが攻撃されたという事件ですが、見事に同じような様子を描いています。

 

他にも3.11の津波と原子力発電の破壊を彷彿とさせるカードもあります。

 

 

一番上のカードが津波、二番目が原子力発電の事故、三番目が原子モンスター、つまり放射能汚染ということを表現していると解釈することができます。

 

さらに二番目のカードを逆さにすると

 

 

「311」という数字が浮かび上がってくるようにも見えます。多少強引な感じはしますが、そう見えなくもありませんし、原発のヒビが桜に見えるので、日本を想定しているということもできます。

 

このようにイルミナティカードは数多くの事件、事故を彷彿とさせるイラストがあることから、これは「予言」ではなく、イルミナティの「計画」であるというのが陰謀論界における定説です。

 

「信じるか信じないかはあなた次第です」ってやつですが、そのイルミナティカードが今回の新型コロナウイルスも予言(計画)していた!!という人もいます。

 

どんなカードなのかを見てみましょう。

 

タイトルは、Epidemic「疫病」。

 

文章には「これはあらゆる場所を破壊する攻撃」と書いてあります。

 

新型コロナウイルスと特定できる情報はありませんし、過去にもSARSやエボラ出血熱、デング熱など感染病が流行ったので、何とでもいえますが、拡散力でいえば今回の新型コロナウイルスが一番高く、「あらゆる場所を破壊する攻撃」という表現がその拡散力を描写しているとも言えなくもないです。

 

あとこんなカードもあります。

 

 

タイトルは「研究所の爆発」です。

 

今回の新型コロナウイルスに関しては武漢の研究所から漏れたという可能性が指摘されていますが、「研究所の爆発」=ウイルスが漏れることを表しているとも解釈できないこともないです。

 

しかし、こじつけ感が半端ないことも否めません。

 

また、「研究所の爆発」は武漢のパンデミックを表しているのではなく、先ほど紹介したロシアの2019年9月のウイルス研究所の爆発のことを表しているともいわれています。

 

真相は分かりませんが、これらのカードが新型コロナウイルスの拡散を描写しているという都市伝説は個人的には正直、無理があると思います。

 

新型コロナウイルスについては様々な憶測が飛び交っていますが、今回紹介した陰謀論や都市伝説の正否を断定をするには材料がまだまだ少ないです。

何か新しい発見があったら記事にするかもしれません。

とりあえず、次回以降は、コロナウイルスの予防法や、パンデミックによる世界の政治経済への影響について記事にしていきたいと思います。現実問題としてはそっちのほうが重要でしょう。

 

ということで今回はこれで終わりにします。最後まで閲覧いただきありがとうございました。

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