中国「一帯一路」の現状。参加国一覧と各国が支持をする理由

中国の習近平が掲げる現代のシルクロードとも言うべき「一帯一路」の参加国は、中国の王毅外相が明らかにしたところによると、123カ国に上ります。その中で参加することが明らかになっている国を挙げていきます。

 

参加国一覧

 

中国政府によると「一帯一路」の協力文書に調印しているのは120ヶ国以上です。その中でも「一帯一路」へ積極的な参加意思を示している国は以下の通りです。

 

【ヨーロッパ】エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、スロベニア、クロアチア、ブルガリア、ギリシャ、マルタ、ポルトガル、スイス、オーストリア、イタリア、ギリシャ、ロシア

 

【アジア・中東】シンガポール、インドネシア、ミャンマー、モンゴル、カザフスタン、イラン、パキスタン、アルメニア、アゼルバイジャン、ジョージア、トルコ

 

【アフリカ】ジブチ、エジプト、ケニア、セネガル、南アフリカ

 

各国が一帯一路を支持をする理由

 

中国の一帯一路を支持する国の背景を見ることで世界情勢が掴みやすくなると思います。ということで、ここでは比較的重要な国々を挙げて、支持をする理由を書いていこうと思います。

 

一番強力なパートナー、ロシア

 

ロシアは中国が掲げる一帯一路構想に一番協力的な国といっても過言ではありません。

 

201558日にはプーチン大統領は習近平総書記と会談し、一帯一路をユーラシア経済連合(2015年発足。加盟国:ロシア・ベラルーシ・カザフスタン・アルメニア・キルギス)と連結させるとする共同声明を発表しています。

 

さらに同年プーチン大統領は中国のシルクロード経済連合の連結がアジア太平洋の繁栄をもたらすとする寄稿文を世界各国のメディアに発表しました。

 

その後も両国は結束を強め、プーチン大統領はユーラシアにおける大経済圏を中国と共同でつくっていく旨を度々発表しています。

 

草原の道構想を掲げるモンゴル

 

2016624日の中露蒙首脳会談では「中国・モンゴル・ロシア経済回廊建設計画綱領」が調印されました。これはモンゴルのツァヒアギーン・エルベグドルジ大統領が掲げる草原の道構想と一帯一路とユーラシア経済連合の連結するという内容です。

 

エルベグドルジの後任であるハルトマギーン・バトトルガ大統領もエルベグドルジの姿勢を踏襲して同経済圏の建設をしようとしています。

 

中央アジアの要、カザフスタン

 

20176月のカザフスタンのアスタナの上海協力機構の首脳会談で一帯一路への支持などを表明したアスタナ宣言が採択されました。カザフスタン大統領のヌルスルタン・ナザルバエフ大統領も自ら掲げる「ヌルリ・ジョーリ(光明の道)構想」はシルクロード経済ベルトの一部と認め、中国の一帯一路と連結する意思を示しています。

 

中国とともにアメリカと対立するイラン

 

中国はイランを一帯一路における重要な沿線国と位置づけています。中国は核合意の擁護をアピールしてイランとの関係を強化し、中東でにおける影響力を拡大していく戦略のようです。

 

中国とイランは昔から親交があり、お互い重要な貿易パートナーです。イランにとって最大の貿易相手国が中国で、中国の6番目の原油供給元国がイランです。

 

イランはオバマ大統領時代のアメリカとの融和ムードがありましたが、トランプ政権に変わってからはまた関係悪化し、経済制裁を受けています。その状況を少しでも良くするためにもイランにとって中国は超重要な貿易国です。

 

中国もまたアメリカとの貿易戦争が激化している真っ最中なので、同じような境遇にあるイランとは利害が一致するわけです。

 

陸路の要、トルコ

 

中国は一帯一路構想における最重要国の一つにトルコを挙げています。トルコは中国にとってアジアとヨーロッパを陸路における重要拠点です。

 

実際にその構想を実現すべく、バクー(アゼルバイジャン)→トビリシ(ジョージア)→カルス(トルコ東方の都市)を繋ぐ鉄道プロジェクトが始動しています。

 

トルコとしても兄弟国のアゼルバイジャンや隣国のジョージアにおけるインフラ整備は願ってもないことであり、中国の一帯一路を逆用して、自国の存在感を高めようとしているようです。

 

 

地中海の貿易の要、イタリア

 

イタリアはギリシャなどとともにEU加盟国の中では一帯一路に積極的に協力しようとしている国の一つです。20175月の北京で開催された一帯一路国際協力サミットフォーラムでは、G7(日本、アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア)の中で唯一首脳が出席した国はイタリアでした。他のG7国は閣僚級を出席させるに留まり、イタリアの積極性が浮き彫りになりました。

 

実際、中国と一帯一路に関する覚書を締結した国はG7の中ではイタリアだけです。この覚書にはジェノバなどの主要港のインフラ整備に中国企業が参画することや共同での資源探査などが盛り込まれています。契約規模は25億ユーロ。将来的には200億ユーロにまで拡大する可能性があるとされています。

 

こうしたイタリアの動きは西側諸国のパートナーとも協議なしで行われたこともあり、ドイツ、フランスなどEUの中核となる国やアメリカに強い懸念をもたらしています。

 

イタリアが一帯一路への参加を決めた背景には欧州債務危機以降の景気悪化と財政悪化があります。イタリア政府はチャイナマネーを頼み綱にして、悪化状態の経済と財政を回復させようと目論んでいる模様です。しかし、中国側の甘い誘いは債務の罠の可能性が高いと指摘されているように、長期的に見ると経済と財政はむしろ悪化していってしまうかもしれません。

 

 

また、イタリアで台頭し、市民の支持を集めているポピュリスト政党「五つ星運動」の党首であるディマイオ副首相が中国寄りであることもイタリアが一帯一路に積極的な大きな要因です。彼は経済発展省内に中国担当タスクフォースを設立し、イタリアを「一帯一路」における「中国の特別パートナー」にするという目標を公然と掲げています。そのタスクフォースを率いるのはジェラーチ経済発展省次官で、2018年の入閣以前に約10年もの間、中国で暮らしていました。

 

中国への牽制を緩めない西欧諸国の中でイタリアはどんどん中国に寄りになっています。かつてのローマ帝国の威光を失ったイタリアの面影はなく、中国の経済支援を頼りにせざるを得なくなっているように見えます。かつての古代のシルクロードと現代のシルクロードとは様相が全く異なることがわかります。

 

貿易港を買収されたギリシャ

 

イタリアと並んでヨーロッパの中で一帯一路に積極的に協力しようとしている国がギリシャです。

 

ギリシャのカトロガロス外相は「中国とは共通の利益がある」と語り、中国の習近平総書記も「ギリシャは中国にとってよき友だ。ともに一帯一路を成功させよう」と両国はお互いに繋がりの強さを強調しています。

 

習氏はかつて債務危機に陥っていたギリシャを財政支援し、その流れで中国の国有企業がギリシャにおける最大規模のピレウス港を買収しました。ギリシャの中国側は欧州への入り口となるピレウス港からイタリアのトリエステ港へと続く一帯一路のルート形成をしようとしています。

 

保険市場を狙うスイス

 

スイスのマウラー連邦大統領は2019425日北京で開かれた記者会見にて「一帯一路」イニシアチブにスイスが正式に加入することを発表しました。マウラー氏は一帯一路に対する評価として「全人類に奉仕」とまで述べ、賞賛を惜しみません。

 

その「一帯一路」構築の過程でスイスが重視するのは「民間資本の導入」「持続可能性」「社会的責任」「グリーンであること」「透明性」の5つの原則だとし、以下のことを述べています。

 

「一帯一路は今世紀最大の投資プロジェクトで、我々も自国の経済成長を実現したければこの投資に参加しなければならない」

 

「中国には非常に美しい未来があると感じる。我々は資産を未来に投じようとしているが、中国の未来はここに在席している若者によって創られる」

 

「西側が中国のテック企業、ファーウェイと対立するなか、スイスはファーウェイによる自国の5G建設への参与に反対していない。ファーウェイは実際に、すでにわが国のモバイル通信ネットワークの建設に参与している」

 

つまりスイスもまた自国経済の発展を促すためには中国との協力関係が必要不可欠であることを強く認識しているようです。

 

スイスといえば金融・保険業が盛んですがスイスにとって中国は今後15年以内に世界最大の保険市場になる見通しで、一帯一路はスイスにとっても大きなビジネスチャンスなのです。現時点でもスイスは中国と自由貿易協定を結んでいる唯一の国であり、対中輸出は大幅に伸びています。

 

チャイナマネー頼りの中・東欧諸国

 

中国・中東欧諸国(チェコ、スロバキア、ハンガリー、ブルガリア、マケドニア、アルバニア、セルビア、モンテネグロ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、リトアニア、ラトビア、エストニアなど)の首脳会議が一帯一路構想が発表された翌年の2012年から毎年開催されていますが、これらの国々も一帯一路に積極的に参加しようとしています。

 

簡単に言うと、これらの中・東欧諸国は比較的豊かとは言えない国のため、中国の経済支援を頼りにインフラ整備などを進めようとしている一方、中国はこれらの国々における影響力を高めようとしています。

 

すでにセルビアではハンガリーのブタペストまで通ずる鉄道の近代化事業が、モンテネグロではアドリア海のバル港からモンテネグロとセルビア国境に続く高速道路の建設が進められています。さらにブルガリアにおいても2018年に中国の国営銀行がブルガリアの地方自治体や企業を支援するためにブルガリア開発銀行に15億ユーロを融資することが決まりました。

 

 

西欧諸国が中国に対して危惧しているのに対して、中・東欧諸国は中国寄りな傾向があります。比較的裕福な国は中国に頼る必要性があまりない一方で、中・東欧諸国のような国々は投資という形で実際にお金を出してくれる中国にどうしても寄っていってしまうようです。

 

 

欧州とアジアを繋ぐ要衝、エジプト

 

エジプトは一帯一路構想において、欧州とアジア(インド洋)を繋ぐ海路の要衝であるスエズ運河があります。そんなエジプトには既に中国企業からの投資が集まっており、中国主導によるエジプトの新開発が進んでいます。

 

というのも、エジプトにはカイロの人口過密状態を解消するためにカイロ近郊に新首都を新しくつくるという構想があり、その計画に対し中国が投資に名乗りをあげたのです。

 

具体的には中国の銀行が新首都のビジネス地区建設に30億ドル、カイロ市内と新首都を結ぶ鉄道建設に25億ドルを融資し、中国の国有企業がビジネス地区に20棟の商業ビルとアフリカで一番高い385メートルの高層タワーを建てることになっています。

 

アラブの春以降、相次いで政変が起こり、IMFの融資を受けるほど外貨不足に陥ってしまったエジプトは中国による投資で起死回生を図ろうとしています。

 

中国にとっても一帯一路において海洋ルートで欧州とアジアを繋ぐスエズ運河を押さえることができるわけですからお互いメリットがある様に見えます。

 

しかし中国はギリシャと同じ様に要衝となる港などをいつか買収することを企んでいるかもしれません。その危険性をエジプトが考慮に入れているようには見えませんが果たしてどうなのでしょうか。

 

インフラ整備の必要性と借金地獄の狭間で揺れるアフリカ諸国

 

エジプト以外のアフリカ諸国もまた中国の一帯一路構想に積極的な参加意思を示しています。

 

2019年5月23日、24日にザンビアの首都ルサカで中国アフリカシンクタンクフォーラムが開催されましたが、開幕式で挨拶した李傑・ザンビア駐在中国大使は

 

「『一帯一路』構想と中国アフリカ協力フォーラムは中国とザンビアを含むアフリカ諸国との協力で二大プラットフォームとなっており、アフリカの国民に利益をもたらしている。中国はこの二つのプラットフォームを通じてアフリカ諸国との協力を続けていく」

 

と述べ

 

ザンビアの初代大統領を務めたカウンダ氏は

 

「1970年代、中国は巨大な人的物的資源を投入して総延長1800キロを超えるタンザン鉄道を建設し、われわれに海に出る新しい通路を提供した。アフリカ諸国は開発において大きな潜在力を持っている。中国との協力によって発展のチャンスがますますもたらされている」

 

と述べました。

 

 また、ザンビアのムワナカトウェ財務相は

 

「中国はこれまで9年連続でアフリカ最大の貿易パートナーとなっている。世界最大の途上国として中国とアフリカは運命共同体となった。アフリカ諸国は開発戦略を調整して、『一帯一路』構想と連携していくべきである。これはアフリカの経済社会発展と国民生活改善に大きく役立っていく」

 

と述べ、中国との協調関係を強調しています。

 

アフリカ諸国の多くは親中的でインフラ整備をするためには中国の協力が欠かせないと考えているようです。その一方で警鐘を鳴らす人も少なくありません。

 

アフリカ経済の専門家 アリカン・サチュ氏はケニアでの中国の投資による鉄道敷設についてこう述べています。

 

「鉄道敷設は重要ですが、費用がかかりすぎます。 政治指導者たちは中国を何でもくれるサンタクロースだと誤解しています。 (中国の行いは)借金漬けにして影響力を握る。 “新植民地主義”と指摘されてもしかたない。」

 

2017年に開通した首都ナイロビとインド洋に面した港町モンバサの間を結ぶ鉄道は3000億円を超える工事費がかかり、そのうち9割は中国からの借金で賄われました。開通から1年で延べ110万人以上が利用しましたが、経営面では運営コストが高くつき採算がとれていない模様で、ケニア政府が財政で赤字を穴埋めしているという悪状況です。それにもかかわらず政府は鉄道を延ばそうとし、国民は先行きを不安視しています。

 

そういった中国による借金漬けを危惧してアフリカでもシエラレオネなどは中国による融資を拒否しています。

 

参加に積極的でもシエラレオネのように政権が変わると中国との関係性を見直して一帯一路から退却する国も他にもあります。ということで次回の記事では一帯一路に対して拒否の意思か懐疑的な姿勢を見せている国々を紹介しようと思います。
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