日米貿易協定の影響・問題点。TAGからFTAに発展後の危険性とは?

今年4月から日米間で審議がなされてきた日米貿易協定ですが、協定内容が国会で承認され、2020年1月1日から発効することになりました。その内容について簡単に触れて、その問題点を挙げていこうと思います。そして今後TAGからFTAに発展していった先の危険性について詳しく見ていきます。

 

日米貿易協定の内容

 

今回の日米貿易協定での変更点は以下の通りです。

●輸入品

【牛肉】38.5%→最終的に9%(2033年度に)

【安い豚肉】最大482円/kg→2027年には50円/kg

【高級豚肉】4.3%→2027年には撤廃

【ワイン】関税最大94円→2025年には撤廃

【オレンジ(12~3月)】32%→2025年には撤廃

【りんご】17%→2028年には撤廃

【さくらんぼ】8.5%→2023年には撤廃

【乳製品】バターや脱脂粉乳などの低関税の輸入枠は設けない

【米】関税維持

 

●輸出品

【自動車】追加関税は回避。関税撤廃は見送りで今後審議次第(おそらく無理)

【自動車以外の工業部品】エアコン部品・燃料電池など幅広い分野で関税撤廃

【牛肉】6万5000トンを上限に4.4%の低税関税枠

 

輸入面で日本政府はかなり米国に譲歩した模様で、日米貿易協定とTPP11をあわせた農林水産物の生産減少額は約1200億円から約2000億円と政府によって試算されています。対策を講じるため生産量や食料自給率は変わらないと政府は説明していますが、具体策は示されていません。

 

輸出においては車の関税が撤廃されることはありませんでした。今後も審議されていくようですが、日本政府は今後の審議は関税撤廃が前提にされていると嘯いて外交の勝利を演じています。しかし、米国は文書で関税撤廃の審議はするといっているだけで撤廃を約束しているわけではありません。

 

日本車が無関税になると米国産車は大ダメージを受けます。トランプ大統領はアメリカ産業を守ることを優先しているので、関税撤廃するわけがないことがわかるでしょう。

 

問題点1:ポストハーベスト農薬まみれの果物の輸入増加

 

まず挙げられる問題点として、りんごやオレンジの関税が撤廃されることで果物農家の経営が危ぶまれることにあります。健康面の問題としては輸入される農作物にはポストハーベスト農薬が大量に使われるということです。

 

ポストハーベスト農薬とは収穫後にまかれる農薬のことで、国内での使用は禁じられていますが、外国からの輸入作物には使われています。貨物船で虫に食べられたり、カビが生えたりしないように収穫後にも農薬をかけるのですが、日本ではそれが農薬ではなく「食品添加物」として扱われ、規制が緩い上に収穫後の散布になるので当然残留農薬値が非常に高くなります。

 

そもそもポストハーベスト農薬(OPPやTBZ、イマザリルなど)は国内では発がん性に問題があるとして製造・販売・使用が認可されていないのに対し、海外からのものは規制がないというのは変な話だとは思いませんか?

 

このダブル・スタンダードの背景には、1970年代にアメリカがかけてきた圧力があります。当時、米国産レモンにはポストハーベスト農薬として防カビ剤が使われていたのですが、日本では未許可だったためにレモンの輸入に難色を示していました。それに対し米政府が激怒して、日本からの自動車の輸入制限をすると圧力をかけてきたのです。そうされては困る日本は防カビ剤を食品添加物として認可する「妙案」を打ち出しました。要はアメリカの圧力に屈したのです。

 

昔も今も似たような構図ですね。今回も自動車の輸入制限で脅しをかけられて、貿易交渉の主導権を奪われています。

 

ちなみにアメリカは世界五位のオレンジ生産量を誇り、2018年の財務省の貿易統計によると、オレンジ(生果)の輸入量は約8万1600トンで、そのうち52%がアメリカです。国産のうんしゅうみかんの生産量は約78万トンで、国内消費量に占める輸入の割合は1割程度ですが、関税が撤廃されればアメリカ産のみかんの価格は下がり、より流通量が増えるでしょう。

 

健康面を考えるのであれば、ポストハーベスト農薬がかけられることがない国内産の農作物を買うに限ります。オーガニックか、無農薬だと尚良いです。

 

 

問題点2:危険すぎるアメリカ産牛肉の輸入増加

 

今回の最大の問題点は牛肉の関税が最終的にTPPと同じ水準の9%に下げられるということです。国内の畜産農家への影響を抑えるため、一定の数量を超えれば関税を緊急的に引き上げる「セーフガード」と呼ばれる措置が導入されるようになっていますが、発動されたら「発動水準を一層高いものに調整する協議を開始する」とサイドレターに記されているために結局は上限を変えられて、国内の畜産業は大ダメージを受けることになるでしょう。

 

そうなるとアメリカ産の牛肉がより多く市場に出回ることになります。

 

アメリカ産の牛肉と言えば、2006年頃にアメリカの狂牛病(BSE)で注目されたレンダリング(不要になった家畜などの脂肪を溶かし精製して油脂にすること)の実体ですが、今はもう忘却の彼方で、なかったことのようになっていますが、アメリカの牛肉産業の実体はそれ以降ほとんど変わっていないようです。

 

というのも全米で約9千万頭もの牛が飼われていますが、そのうちの約75%が日常的にレンダリングされた動物の死体で栄養強化されたエサを食わされているのです。(参考:『まだ、肉を食べているのですか』 ハワード・E・ライマン&グレン・マーザー著)そして狂牛病の原因がその連続的なレンダリングによる餌やりだと言われています。

 

他にもアメリカにおける牛の飼育の実態を列挙します。(『まだ、肉を食べているのですか』より抜粋)

 

・動物の排泄物をエサに混ぜるのは当たり前

・アーカンサス州の平均的な農場では、毎年50トン以上の鶏の糞便を牛にエサとして食べさせている。

・ある種の病気は、宿主から人間に感染することはよく知られている。よく知られた食物感染もある。それは食物が糞便に汚染され、流行性E大腸菌によってもたらされる伝染病だ。毎年、約8000人ものアメリカ人がこの感染症で亡くなっている。さらに食品汚染の約80%は、汚染された肉から発生していることもわかっている。

アメリカで生産されるほとんどの肉が、ダイオキシンなどの発ガン物質で汚染されている。これは除草剤の一つで米軍が枯葉剤としてベトナム戦争時に用いたエージェント・オレンジに近い化学構造を持つ。

家畜用穀物は、人間用に比べ、びっくりするほど高濃度の農薬残留が許可されている。

農薬など他の毒性物質にまみれたエサを摂取するたびに、それらを脂肪に蓄積させる。だから家畜が、ほかの動物たちの肉から作られたエサを食べるとどうなるかというと、家畜が最大レベルの発ガン物質をたっぷり濃縮して脂肪に蓄え、それを我々が食べることになる。つまりたっぷり濃縮された発ガン物質が戻ってくることになる。

 

 

こうした劣悪な飼育法で育てられた肉がスーパーにたくさん並ぶことになります。飼育方法が改善されれば話は別ですが、このままの場合はアメリカ産の肉はいくら安くても避けるのが賢明でしょう。

 

「環境面」で考えるのであれば、一番いいのは「地産地消」で、生産者の顔と生産方法がわかるものを選ぶことです。より近くのものを選ぶことで輸送コストが減り、環境負荷も少なくなります。

 

日米貿易協定の今後「TAGからFTAに移行」

 

トランプ大統領は「今回の協定は第一段階に過ぎない」と述べています。

 

今年9月の最終合意の際に公表された日米共同声明には協定発効後(2020年1月1日)、4カ月以内に今後の交渉対象分野を絞り込んだ上で、貿易促進に向けた関税や他の貿易上の制約、サービス貿易、投資への障壁などを巡る交渉を開始する方針が盛り込まれています。

 

USTR(アメリカ通商代表部)が明らかにした交渉概要では、日米貿易協定に関する交渉目的は対日貿易赤字の解消であり、交渉範囲は22項目に及び、物品貿易、衛生植物検疫措置、税関・貿易円滑化、原産地規制、知的財産、医療・医薬品の手続的公平性、政府調達、紛争解決為替条項など全面的です(USTR2018年12月21日)。

 

日本政府は今まで日米貿易協定を物品だけに限る物品貿易協定(TAG)だと強調してきましたが、日米共同声明をみると、サービスや投資分野にまで拡大する予定なので、このままだと自由貿易協定(FTA)に移行することになります。

 

それの何が問題なのかというと、FTAになると紛争解決における「ISDS条項」や「為替条項」が盛り込まれることになり、日本経済がアメリカ企業の意のままにされる可能性が高くなるのです。

 

それらの問題点は過去の記事で取り上げましたし、他のニュースメディアで数多く取り上げられているので、知っている人は読まなくていいですが、改めてその問題点をおさらいしておきます。

 

・ISDS条項の問題点

 

ISDS条項は日米間で設定すると、協定違反によりどちらかの投資家が損害を被った場合は違反したとする企業や政府(地方自治体含む)を訴えることができるようになります。ISDS条項の危険性は北米のNAFTAや米韓FTAでどうなったかを見れば分かります。

 

実際に起こった具体例を挙げると、

 

・AbitbiBowtaer社の例

カナダのニューファンドランド州にあったアメリカ資本の会社が工場を閉鎖した後に同州政府が工場跡を接収し、水源と森林伐採地にしたのですが、なんとその閉鎖した会社が水源権と森林伐採権を損なったとして150億円もの損害賠償を起こしました。

これを噛み砕いていうと「あの時、我が社が工場を閉鎖しなければ水源地や森林伐採地として利益が出ただろう。その機会をあんたたち州政府が奪ったのだから保障しろ」ということです。

 

 

こんなにも理不尽な要求がまかり通るはずないでしょと思うでしょうが、結果は告訴側のアメリカ会社が勝訴しています。

 

他にも・・・

米企業はメキシコ内で産業廃棄場の建設をしようとしましたが、環境保護を理由に地元の自治体が建設の不許可を出しました。すると、この不許可がNAFTAの貿易ルールに違反するとして米企業がISD条項を根拠に訴訟を起こしました。その結果、ICSID(投資紛争解決センター)は2000年、メキシコの自治体側の主張を退け、メキシコ政府に1600万ドルの賠償を命じました。

 

他にも数百億円規模の訴訟が多数あり、十中八九アメリカ側が勝利しています。それもそのはずNAFTAや日韓FTAにおけるISDS条項の裁判所=ICSID:投資紛争解決国際センターはアメリカのワシントンにあるのです。

 

さらにそのICSIDは世界銀行の傘下にあり、1946年に設立された世界銀行の総裁は、当初から今日までアメリカ人であり、その人物が任命する裁判員が、ISDS条項違反の可否を決定するのです。当然アメリカ側に有利になる判決になります。

 

日米FTAでも投資紛争の裁判はICSIDになる可能性が非常に高く、そうなると日本側は自国語ではなく英語で弁護しなければなりません。

 

この時点で不利な点しかないですし、日本は戦後から一貫して事実上アメリカの属国なので、いくら不条理な告訴でも日本側が負けることになるでしょう。

 

カナダはISDS条項で滅茶苦茶にされた経験があるので、2018年に締結された新NAFTAではアメリカとカナダ間ではISD条項が無くなりました。米国とメキシコ間でも無くなることはありませんでしたが、大幅に縮小されました。

 

一方、日米FTAでISDS条項が盛り込まれることで、日本国内で訴訟されるリスクが高まります。一応今まで日本はアメリカ以外の国とFTAを結んでおり、ISDS条項は盛り込まれているので、その締結国を経由して多国籍企業が日本を訴訟できるようにはなっていましたが、訴訟されたことはありません。だからといって日米FTAで訴えられることはないという保証にはなりません。

 

先進国同士でも訴訟が多いので、日本でも不条理な訴訟がされることが出てくる可能性は否めません。

 

そういった訴訟リスクに対する恐怖感を利用して様々な要求をしてくる可能性も高いです。実際、韓国においてそのようなことが起こりました。過去記事でも取り上げたので再掲になりますが、重要なところなので、再度引用します。

 

韓国の小学校でも、 日本と同様に給食があります。多くの自治体は「 子どもの給食には地元の食材を優先させて使うこと」 という条例を定め て い ます。「地産地消」という考え方 ですね。ところが、 これにもアメリカから横槍が入りました。「そんな条例があったら、学校給食にアメリカの食材が使えないじゃないか」というわけです。このため、韓国政府は各自治体に地産地消の条例をやめるように指示しました。結局、すったもんだした挙句、9割の自治体が「 地産地消」を条例からはずしました。おそらく、日本でもこうしたことが起こるにちがいありませ ん。
出典:苫米地英人 著「TPPで日本支配をたくらむ者たちの正体」株式会社サイゾー. Kindle 版
 
韓国政府は何を恐れたのかというと、ISDS条項による損害賠償請求です。 
 
 
 韓国の各自治体が、条例に基づいて従来の「地産地消」の学校給食を続けていけば、米食品会社は思い通りに学校給食市場を獲得できない。その場合、ISD条項を使って韓国政府に損害賠償を求める可能性が出てくる。これを懸念した韓国政府は、先手を打つ格好で、各自治体に給食の「地産地消」優先を取りやめるように指示したといい、山田氏は次のように言葉を重ねた。
 
 「米国は当初、家畜が食べるトウモロコシや大豆はGMO(遺伝子組み換え)に切り換えるが、人間が食べる小麦には使わない、としていた。だが、2012年に渡米した際、米小麦協会の会長は私に対し、『今後は小麦にも適用していく』と明言した。韓国では今、GMO食品による学校給食が始まろうとしている」
 

 

これはアメリカ側の多国籍企業が訴訟という恐怖感を利用して韓国政府に要求した事例ですが、このようなことが日本でも起こることが考えられるのです。

 

元農林水産大臣の山田正彦氏によると、米国通商代表部ウェンディ・カトラー代表補に「TPP協定で米国は日本に何を求めるのか」と聞いたところ「米韓FTAの内容を見てほしい。日本にはそれ以上のものを求める」とはっきりと答えたといいます。アメリカはTPPから離脱しましたが、日米FTAを結べば、結果は同じです。

 

・為替条項の問題点

 

アメリカ通商代表部によれば、アメリカ側は「為替条項」も盛り込む予定のようですが、これは日本の為替操作を禁止しようとしていることが明らかです。実際、アメリカは日本の為替に関して「国際収支の調整を妨げたり不公正な競争優位を得たりするために、日本が為替操作をしないようにさせる」と言及しています。これは日本の政府と日銀が結託して行なっている円安誘導と株価操作のことを指しているのだと思われます。

 

例えばどのような為替操作がされているのかというと、黒田日銀総裁はアベノミクスの異次元緩和の一環として実施している「指数連動型上場投資信託(ETF)」の購入について、「株価安定のために実施している」と明言(失言)しています。

 

簡単にいうと、日銀のお金を株の購入にあてて、日経平均を故意的に上げようとしているわけです。もうすでに失敗と多くの人から分析されている「アベノミクス」を少しでもよく見せるべく「指数連動型上場投資信託(ETF)」を購入し続けて、恣意的に日経平均を上げて、景気がよくなっているように見せているのです。

 

しかし実体経済は向上していないことが実質GDPが伸び悩んでいることからも明らかになっています。GDP成長率は0.814%(2018年)と先進国OECDの中で最下位に位置しているのにもかかわらず、株価は高水準のままです。それは日銀が買い支えているからにほかなりません。

 

 

「株価連動内閣」とまで揶揄される安倍内閣は「為替条項」を今後の貿易協定(日米FTA)に組み込まれると、数字操作ができなくなり、それに伴い国民からの支持率も下がってしまいます。安倍内閣がついに崩壊する日も遠くないかもしれません。為替条項が盛り込まれる結果として、それはそれでいいのかもしれません。

 

なんにせよ、日米貿易協定はまだ序章に過ぎず、今後適用分野を広げ、様々な条項が盛り込まれることが考えられます。

 

日米FTAやTPPを通した多国籍大企業(ロスチャイルドなどの国際金融資本)が日本やその他の国を支配するという「グローバル社会という新たな全体主義化(世界政府の樹立)」が進んでいるようにも見えます。

 

そのグローバルの流れに飲み込まれないためには個々人がローカリズムの流れを作っていくしかないのかもしれません。「地産地消にこだわる」とか「完全オフグリッド生活を送る」とか「里山資本主義経済を地方で作る」とか在り方は様々でしょうが、このまま何もしないのでは大量生産・大量消費社会に歯止めがかからず、地球環境や人々の健康が滅茶苦茶になるのは確かです。グローバルの流れに注視しつつ、自然に根差したライフスタイルに移行していこうと私も考えているところです。

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