香港デモで中国共産党の勝利すると金正恩が不都合なワケ

香港デモが激化するとなぜ北朝鮮の総書記である金正恩にとって都合が悪いのか、その理由を説明していきます。

 

香港デモに対する金正恩の反応

 

前回の記事でも触れましたが、北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、デモ隊と警察隊の衝突が続く香港デモに対して「中国の党と政府の全ての措置を全面的に支持する」とする論評を掲載しました(2019年8月13日付)。

 

しかし、金正恩の本音は複雑でしょう。建前上民衆デモを支持することができませんが、民衆デモが鎮静化して、香港において中国共産党の影響力が強まることは金正恩にとって喜ばしいことではありません。

 

北朝鮮にとってのマネーロンダリングの場、香港

 

なぜそういえるのかというと、北朝鮮の経済拠点が香港にあり、それが失われてしまうかもしれないからです。

 

習近平率いる中国共産党は逃亡犯引き渡し協定を香港と結ぶことで香港への影響力を更に強めて、香港で跋扈する江沢民一派(上海閥)を除外しようと企んでいるのですが、その上海閥と手を結んでいたのが北朝鮮でした。つまり習近平は政敵である江沢民一派+北朝鮮を香港から追い出そうとしていると見ることができます。

 

実際、北朝鮮は様々なマネーロンダリング(資金洗浄)を香港で行ってきました。2017年10月17日のCNNの報道によると、香港にある「香港ウナフォルテ社」という企業は、北朝鮮のペーパーカンパニーであり、北朝鮮政府は国際金融ネットワークへアクセスする際にその会社を利用しているといいます。さらに同報道によると、香港には160社もの北朝鮮関連の会社が存在しているのだそうです。(“Hiding in plain sight: Why Hong Kong is a preferred spot for North Korea’s money launderers”)

 

さらにロイター通信によると、2019年6月には、アメリカの裁判所が中国の大手銀3行(交通銀行、招商銀行、上海浦東発展銀行)に対し、対北朝鮮制裁違反調査に絡む召喚状に従わなかったとして侮辱罪の判決を下しましたが、この三銀行は北朝鮮の銀行のために1億ドル以上ものマネーロンダリングを行った香港の企業と協働していたようです。(2019年6月25日 “Chinese bank may face U.S. action in North Korean sanctions probe: Washington Post” )

 

香港を拠点に武器輸出入する北朝鮮

 

北朝鮮は武器輸出入も香港で行っていました。

 

北朝鮮はアフリカの国々(アンゴラ、コンゴ、タンザニア、ジンバブエなど)と武器取引におけるビジネス関係にあることは周知の事実ですが、それらの国々に武器を輸出することで外貨を獲得してきました。

 

実際、2016年にエジプト沖で拿捕だほされた貨物船からは、北朝鮮製対戦車ロケット弾3万発が押収されたことがニュースにもなりました。そしてあろうことか、この船の所有企業は香港企業で、オーナーの中国人は北朝鮮と隣接していて、なおかつ上海閥の支配下にあった中国東北部の丹東の大手貿易会社をも所有していたことが判明しています。これは「上海閥-香港-北朝鮮」という繋がりが表面化した事件の一つといえるでしょう。

 

北朝鮮を操作していた江沢民派、張徳江の失脚

 

上海閥と北朝鮮の繋がりは前から存在していましたが、それが断たれようとしています。その端緒となったのが江沢民派、張徳江の失脚です。張徳江は中国共産党序列第3位で習近平、李克強に続く大物でしたが、2017年10月の中国共産党大会で失脚し、引退を勧告されました。

 

直後、アメリカ政府は米国愛国者法311条にしたがって北韓の核・ミサイル開発支援に関与したという理由で、中国の丹東銀行を米国の金融システムから完全に退出させる強力な制裁を断行しました。

 

丹東銀行を握っていたのが張徳江で、丹東銀行を通して北朝鮮を支援(というよりも「操作」のほうが適切かもしれません)していたのですが、張徳江の失脚に伴い、米中の半ば共同によって丹東銀行も締め出され、北朝鮮は資源も資金も止められてしまう国家存亡の危機に直面します。

 

丹東市は北朝鮮と隣接している地理的な条件ゆえに北朝鮮との繋がりが深いところです。実際、朝鮮族が1万7000人ほど住んでいることからもその繋がりの深さがうかがい知れます。ここが北朝鮮に物資や資金を送る拠点となっていたのです。

 

 

 

その丹東市の利権を持っていた張徳江が排除されて以降、急速に変化が起きています。2017年11月、北朝鮮に様々な物資を流していた中国の朝鮮族の実業家が、何人も逮捕されました。

 

その時を契機に北朝鮮の金正恩総書記は大きく態度を変えて対話ムードを演出し始めます。

 

つまり、北朝鮮の大きな方向転換は中国共産党の権力争い(習近平vs江沢民一派)の結果でもあったのです。

 

北朝鮮の命運を分ける香港デモ

 

ここまで見ればなぜ香港デモの鎮静化が金正恩にとって都合が悪いのかが見えてくるでしょう。つまり、香港デモにおいて中国共産党側が勝つということは、香港に拠点を置く北朝鮮の支援者(上海閥)が香港から排除されることでもありますし、北朝鮮にとっての数少ない大事な経済拠点を失うことにもなるからです。

 

金正恩は固唾を飲んで香港デモの動向を見守っていることでしょう。表向きは中国体制側を支持するようなことを言いながらも、裏では民衆側を応援しているのかもしれません。

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