消費税増税の必要性を説く政財界のウソ。黒幕は財務省?

2019年参議院選挙では「消費税増税の是非」が争点の一つになっていますが、ここではその増税の必要性のウソについて書いていこうと思います。

 

消費税増税が社会保障のためには不可欠という嘘

 

まず消費税というものは存在意義そのものが多くの識者によって疑問視されています。1989年に消費税が創設されるとき、国は「少子高齢化のために、社会保障費が増大する。そのため、消費税が不可欠」と喧伝しました。しかし、実際消費税は、社会保障費などにはほとんど使われていなかったのです。

 

では、何に使われたのか?

 

それは皆さんもご存知のはず、大企業や高額所得者の減税の穴埋めのために使われてきました。それは消費税導入前の現在の各税目データを比較すれば一目瞭然です。それは国が公表しているもので、誰もが確認できるデータです。

 

1989年に消費税が導入されたその直後、法人税と所得税が相次いで下げられました。次に5%へと増税となったのは1997年。この直後にも法人税と所得税が下げられています。そして面白いことに法人税の減税対象となったのは大企業であり、また所得税のこの減税の対象となったのは、高額所得者でした。

 

実際バブル期前後から相次いだ最高税率の引き下げ(75%→45%)や、富裕層に集中している株式譲渡益への課税が10~20%という低率な分離課税で推移してきたことなどで、所得再分配機能が低下傾向にあるのです。

 

日本での所得税の税収の推移を見ると

 

【所得税】1991年:26.7兆円→2018年:19兆円

【法人税】1989年:19兆円→2018年:12兆円

 

つまり所得税と法人税の税収は、この30年の間に、14.7兆円も減っていたのです。

 

一方で現在の消費税の税収は17.6兆円です。つまり、消費税の税収の大半は、所得税と法人税の減税分の穴埋めで使われていることが分かります。消費税によって新たに使えるようになった財源はわずか3兆円に過ぎません。

 

もっと短い期間でも分析してみましょう。2014年4月から消費税は5%から8%に増税されましたが全体の税収は上がっていません。3%の増税分で税収は約8兆円ですが、安倍首相は国会の施政方針演説(1月28日)で「増税分の5分の4を借金返しに充てていた」と明らかにしています。そして消費税を引き上げる一方で安倍政権は7年間で社会保障を4兆円以上削っています。

 

出典:しんぶん赤旗「社会保障費4.3兆円削減」

 

消費税率引き上げは社会保障のためという文句がいかに虚実的なのかが明白です。本当に社会保障のために消費税を上げるのであれば消費税は借金返済にあてるのではなく、公約通り社会保障に使って、法人税・所得税は下げずに借金返済にあてればいいでしょう。しかし法人税・所得税はまた減少傾向に向かうでしょう。それは歴史の流れでもあります。

 

消費税・所得税・法人税の歴史

 

消費税・所得税・法人税の歴史を少しだけ遡りましょう。

 

1989年に日本で初めて消費税が導入されて以降、消費税率引き上げと法人税・所得税の引き下げはほとんど同時に行われてきました。それは世界的な潮流でもありました。1980年代初頭から台頭してきた新自由主義の経済思想が世界で広まり、消費税増税と同時に法人税・所得税減税を推進する政策が流行しました。新自由主義的な米レーガン政権、英サッチャー政権の登場がそれを象徴しています。その潮流は日本にも広がり、影響を与えました。

 

それまでは富裕層や企業が高率で税負担する「累進課税」が税制の基本でした。しかし経済のグローバル化を背景とした1980年代の新自由主義の台頭とともにその流れが変わり、法人・個人の所得課税を軽減する方向へ各国がシフトしたのです。

 

つまり金持ちや大企業に優しく、その他大勢の消費者には厳しい仕組みに徐々に変えられていることが分かります。「強きを挫き弱きを助ける」が政治のあるべき姿だと思いますが、昨今の政治は「強きを守り弱きを叩く」という方向にいっているのです。

 

実際、現代においては高所得者に富が集中し、貧困者層が増えるという貧富の差の拡大が進んでいます。

 

高所得者・大企業への富の集中

 

国税庁の「2014年分申告所得税標本調査結果」によると、株式譲渡益と配当所得が各3000万円超の人数は全申告者の1割前後ですが、彼らの全所得は配当所得で全体の7~8割、株式譲渡益で8~9割を占め、その比率は年々上昇しています。つまり高所得者への「富の集中」が進んでいるのです。

 

また、パナマ文書の漏洩で明らかになったように高所得者であればあるほど税逃れ傾向にあり、それが容易にできるシステムになっているのが現代社会です。

 

参考記事:東洋経済 ONLINE『「パナマ文書」に載った日本人・企業の”事情”』

 

また、輸出大企業への消費税還付金も問題視されています。消費税の還付金は日本を代表する製造業13社だけでも約1兆円です。

 

出典:全商連「トヨタなど輸出13社に消費税1兆円を還付」

 

これは輸出するにあたってかかった仕入れ費用に対して消費税率分が還付されるという仕組みです。例えば、Aという製品を作る会社があったとして、その製品を作るための材料の仕入れ費が年間で1億円かかったとすると、その8%の800万円(消費税が10%になれば1000万円)が還付されるという謎のシステムです。輸出企業は仕入れ先には消費税を支払うが販売先から消費税を徴収できないから、国がその分負担してあげるよということになっています。この仕組みを利用するトヨタ自動車などの輸出大企業は消費税導入以来、一度も消費税を納めたことはありません。

 

以前からこのシステムの不公平さは指摘されていますが、一向に是正される気配がありません。消費税が上ればまた還付金も上がるという仕組みなので輸出メインの大企業にとっては消費税増税は願ったり叶ったりです。

 

国税庁統計年報書によれば、還付額は消費税の税収全体のおよそ25%はトヨタなどの大企業に支払われ、残りの75%が国の税収になるそうです。

 

法人税を引き下げる経団連の意向

 

話は若干逸れましたが、このまま消費税が上がると、次にまた法人税・所得税が下がることが考えられます。経団連の榊原定征元会長は記者会見(2017年)で、実効税率で29%台後半の日本の法人税について

 

「最終的には25%の水準を主張しており、経済界の要望という形で提案していきたい」

 

と述べ、さらなる引き下げを求めていることからも法人税の引き下げが行われる可能性が高いです。安倍晋三首相は法人税引き下げはデフレ脱却のためという大義名分を掲げていますが、本当にデフレ脱却をしたいのであれば、オリンピック特需は終焉に向かいつつあり、米中貿易戦争が引き続き行われる中で、消費を落ち込ませる消費税引き上げはやるべきではないと私は考えます。

 

消費税を減税か廃止して、不公平極まりない輸出企業への還付金制度も無くして、国民の実質賃金を上げて消費を促すべきでしょう。

 

増税論の黒幕は財務省か?

 

日本が借金まみれで増税しないとやっていけないというのは財務省の洗脳なのではないかという識者もいます。例えば森永卓郎氏の言説を文章にしたこの記事を読んでみてください→『消費税を廃止しても財政破綻はない! “借金大国ニッポン”の真っ赤な嘘』

 

また元財務省キャリア官僚の高橋洋一氏も財政破綻論は財務省の嘘で、政府には豊富な金融資産があり、さらに政府の子会社日銀の負債と資産を合体させれば政府の負債は相殺されて減少するということを主張しています。

 

 

消費税廃止論の是非

 

増税必要論は財務省の嘘だとして、ではそもそも消費税は本当に必要なのかということを考えてみましょう。

 

参議院選挙ではれいわ新撰組代表の山本太郎氏も消費税廃止を公約に掲げています。

 

 

消費税廃止しても財源は確保できると断言する山本太郎氏。動画でも紹介されているようにマレーシアでも消費税廃止されています。

 

色々な言説や前例がありますが、様々な意見に触れることで、消費税を上げないと日本社会はやっていけないと思わされているのではないかと再考するいいキッカケになると思います。

 

今回記事にした内容が全て正しいとは言いません。ただ今回の記事の内容を吟味するなどして、マスコミや権威の高い人の言説をそのまま鵜呑みにするのではなく自分で考える人が増えることで、大企業主義的な世の中から本当の民主主義的な国家が生まれるのではないかと思います。このようなことをしっかり考えた上で、選挙でも本当に世の中のことを考え、誠実に行動する人を見極めて投票したいものです。

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