イギリスのEU離脱は結局、延期になり今後離脱するのかどうかはまだ明瞭ではありません。一旦EU離脱へと踏み出したイギリスはなぜそれを躊躇するのでしょうか?
それはイギリス国民がEU離脱した場合のイギリスへの影響を冷静に分析し始めたからです。そのイギリスへの影響とはどんなものなのか?そして世界への影響は?
目次
EU離脱によるイギリスへの影響①:EUとの貿易摩擦
「EUファミリーから去ることを決めたものは、義務がなくなって、利益だけそのまま残ると期待することはできない」(2016年6月28日の演説にて)
EU離脱によるイギリスへの影響②:北アイルランド独立問題再発
イギリスがEU離脱すると、北アイルランド紛争再燃の恐れもあります。北アイルランドはイギリス(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)を構成する一つになっていますが、そのイギリスからの独立機運が高まっていた時期がありました。20世紀後半に独立運動でもあった「北アイルランド紛争」が起きていたのは記憶にまだ新しいと思います。
イギリスもアイルランド共和国も同じEUに加盟していることで「アイルランドと一緒になりたい」という北アイルランドの勢力の動きは一旦は沈静化しましたが、EUから離脱すれば、北アイルランドとアイルランドの間に今はもうない検問所や税関が復活してしまい、両国は切り離されてしまうので再度独立機運が高まる恐れがあります。
対立再燃を避けるためにも、離脱後は国境開放を維持することを英国とEUとで一致していますが、国境を管理することなしにいかに通関手続きを行うのか、具体策はまだ見出されていません。
北アイルランドだけではありません。現にスコットランド政府もまた、英国からの独立を問う住民投票を行う用意があると表明しています。2014年にイギリスからの独立の是非を問う住民投票が行われましたが、僅差で独立反対派が上回りました(賛成:44.7%、反対:55.3%)。北アイルランドの独立機運が高まれば、スコットランドもまたそれに呼応して、再度住民投票を行うかもしれません。
つまり北アイルランドの独立を許せばイギリスの国家解体の幕開けになってしまいます。難民問題を解決する代償はあまりにも大きすぎると言えるでしょう。
「EU離脱しても自由貿易を継続できる上に移民を受け入れずに済む」と煽った離脱派の政治家は今になって「あのスローガンは過ちだった」「可能性を言ったに過ぎない」などと言い出し、離脱派の煽りを信じて離脱に投票した国民の多くは今は後悔しているといいます。だからこれをBregret(ブリグレット:イギリスのBritainと後悔のregretを合わせた造語)というのです。
イギリスがEU離脱した場合の世界への影響①:欧州の危機再来
仮にイギリスがEUから離脱すると痛い思いをするのはイギリスだけではありません。EU側も貿易摩擦でイギリスへの輸出が滞り、経済的打撃を受けることは免れないのです。特にスペインなど対英輸出が景気回復の引き金になっていた国にとってはかなりの痛手になります。
また、イギリスが受け入れるはずだった難民数分はEU諸国が負担することになります。
政治面では、反EUの動きが各国で勢力を強めることになるでしょう。反EUの動きが強まればEU統合の流れが停滞し、EUの国際的地位も低下します。通貨としてのユーロも求心力を失っていくでしょう。
2010年の欧州危機の再来になるかもしれません。
その対策の一つとしてEUは日本との貿易協定「日欧EPA」を結んだとも言えるでしょう。
仮に欧州危機のような事態が再来するとなれば、経済的な悪影響はドミノ倒しのように世界へと広がっていくでしょう。ただでさえドイツ銀行が破綻寸前で世界経済への影響はリーマンショック以上と言われているのに、イギリスの離脱が加われば、世界経済は混沌へと向かっていくことが予測できます。
イギリスがEU離脱した場合の世界への影響②:日本経済にも波及する悪影響
また日本経済への悪影響も出てくる可能性が高いです。イギリスがEU脱退をするとなるとイギリスポンドが下がることになるでしょうが、ポンドに対して円高が進みます。2017年においては日本はイギリスに104億900万英ポンド分の輸出しており、逆に輸入は57億900英ポンドなので貿易黒字です。ですが円高が進むとイギリスへの輸出が滞ってしまいます。遠く離れた異国の問題はグローバルな時代においては無関係どころか関係大ありなのです。
円高が進めば政府と日銀による円安誘導がまた行われるでしょうが、日米貿易交渉にて為替操作の禁止を要求されているので、それもできなくなるでしょう。
以上のようにイギリスのEU離脱の影響はイギリスだけではなく世界的に大きいといえます。イギリスだけでも離脱するメリット(移民排斥)とデメリット(貿易摩擦・国家解体)を合わせてみるとデメリットの方が明らかに大きいように感じます。イギリスのEU離脱騒動はどうなるのか今後も注目していきたいところですが、結局は離脱取りやめにするのではないかと私は予想しています。
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