イギリスがEU離脱した場合の世界への影響

イギリスのEU離脱は結局、延期になり今後離脱するのかどうかはまだ明瞭ではありません。一旦EU離脱へと踏み出したイギリスはなぜそれを躊躇するのでしょうか?

 

それはイギリス国民がEU離脱した場合のイギリスへの影響を冷静に分析し始めたからです。そのイギリスへの影響とはどんなものなのか?そして世界への影響は?

 

 

EU離脱によるイギリスへの影響①:EUとの貿易摩擦

 
 
仮にイギリスがEUを離脱した場合、EU諸国との貿易摩擦が生じることは必至です。
 
 
なぜならイギリスがEUから離脱しても、これまで通りEU諸国と関税なしで自由貿易ができるとしたら他の国も離脱を考えるようになり、EU側はそれを阻止するはずだからです。つまりEU側はEUから離脱したら自由貿易はなくなり経済的に大打撃になるというのをイギリスを例に見せつけるはずであり、そうすることでイギリスに追随する国を出さないようにするでしょう。
 
 
イギリスは難民問題がゆえにEU離脱を目論みましたが、EUから離脱して難民を寄せ付けない上に自由貿易を継続するという良いこと取りのようなことはEU諸国から許されるはずがありません。
 
 
そのEUの思惑を裏付けるようにドイツのメルケル首相はこう発言しています。
 
 
 
「EUファミリーから去ることを決めたものは、義務がなくなって、利益だけそのまま残ると期待することはできない」(2016年6月28日の演説にて)
 
 
 
それでも離脱派はEUから抜けても自由貿易を継続したいと考えています。現時点でそれが可能なのは通称「ノルウェー方式」です。ノルウェーはそもそもEUに加盟していない国なのですが、EUと周辺国で作る「欧州経済地域(EEA)」に参加しています。この取り決めによって漁業と農業以外の商取引が自由に行えるので、イギリスにとって最も悪影響が少ない手段です。
 
 
 
しかし、EEA参加の国々もEUとの自由貿易を代償にEUへの分担金の支払いが義務付けられる上に移民も受け入れる必要があります。これでは何のためにEU離脱したのかがわかりません。さらにEU加盟国ではないから当然発言権はないのでEUのルール作りに参加できず、作られたルールをそのまま受け入れるしかないのです。これではむしろ離脱前より状況が悪化するでしょう。
 
 
 
自由な貿易で利益を享受したければ、分担金と移民を受け入れよ、というのがEUの姿勢なのです。
 
 

 

EU離脱によるイギリスへの影響②:北アイルランド独立問題再発

 

イギリスがEU離脱すると、北アイルランド紛争再燃の恐れもあります。北アイルランドはイギリス(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)を構成する一つになっていますが、そのイギリスからの独立機運が高まっていた時期がありました。20世紀後半に独立運動でもあった北アイルランド紛争が起きていたのは記憶にまだ新しいと思います。

 

イギリスもアイルランド共和国も同じEUに加盟していることで「アイルランドと一緒になりたい」という北アイルランドの勢力の動きは一旦は沈静化しましたが、EUから離脱すれば、北アイルランドとアイルランドの間に今はもうない検問所や税関が復活してしまい、両国は切り離されてしまうので再度独立機運が高まる恐れがあります。

 

対立再燃を避けるためにも、離脱後は国境開放を維持することを英国とEUとで一致していますが、国境を管理することなしにいかに通関手続きを行うのか、具体策はまだ見出されていません。

 

また、EUは北アイルランドだけを関税同盟に残すことを提案しましたが、メイ英首相は国の一体性が損なわれるとして反発しました。その背景には、メイ政権は北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)の閣外協力で維持されているという裏事情があります。DUPは北アイルランドの英国への帰属を強く訴えており、北アイルランドだけを関税同盟に残すことはイギリスからの離反、独立をももたらす可能性があります。

 

北アイルランドだけではありません。現にスコットランド政府もまた、英国からの独立を問う住民投票を行う用意があると表明しています。2014年にイギリスからの独立の是非を問う住民投票が行われましたが、僅差で独立反対派が上回りました(賛成:44.7%、反対:55.3%)。北アイルランドの独立機運が高まれば、スコットランドもまたそれに呼応して、再度住民投票を行うかもしれません。

 

つまり北アイルランドの独立を許せばイギリスの国家解体の幕開けになってしまいます。難民問題を解決する代償はあまりにも大きすぎると言えるでしょう。

 

「EU離脱しても自由貿易を継続できる上に移民を受け入れずに済む」と煽った離脱派の政治家は今になって「あのスローガンは過ちだった」「可能性を言ったに過ぎない」などと言い出し、離脱派の煽りを信じて離脱に投票した国民の多くは今は後悔しているといいます。だからこれをBregret(ブリグレット:イギリスのBritainと後悔のregretを合わせた造語)というのです。

 

イギリスがEU離脱した場合の世界への影響①:欧州の危機再来

 

仮にイギリスがEUから離脱すると痛い思いをするのはイギリスだけではありません。EU側も貿易摩擦でイギリスへの輸出が滞り、経済的打撃を受けることは免れないのです。特にスペインなど対英輸出が景気回復の引き金になっていた国にとってはかなりの痛手になります。

 

また、イギリスが受け入れるはずだった難民数分はEU諸国が負担することになります。

 

政治面では、反EUの動きが各国で勢力を強めることになるでしょう。反EUの動きが強まればEU統合の流れが停滞し、EUの国際的地位も低下します。通貨としてのユーロも求心力を失っていくでしょう。

 

2010年の欧州危機の再来になるかもしれません。

 

その対策の一つとしてEUは日本との貿易協定「日欧EPA」を結んだとも言えるでしょう。

 

日欧EPAの海外の反応。EU・米・中国・韓国はどう見ている?

 

仮に欧州危機のような事態が再来するとなれば、経済的な悪影響はドミノ倒しのように世界へと広がっていくでしょう。ただでさえドイツ銀行が破綻寸前で世界経済への影響はリーマンショック以上と言われているのに、イギリスの離脱が加われば、世界経済は混沌へと向かっていくことが予測できます。

 

 

イギリスがEU離脱した場合の世界への影響②:日本経済にも波及する悪影響

 

また日本経済への悪影響も出てくる可能性が高いです。イギリスがEU脱退をするとなるとイギリスポンドが下がることになるでしょうが、ポンドに対して円高が進みます。2017年においては日本はイギリスに104億900万英ポンド分の輸出しており、逆に輸入は57億900英ポンドなので貿易黒字です。ですが円高が進むとイギリスへの輸出が滞ってしまいます。遠く離れた異国の問題はグローバルな時代においては無関係どころか関係大ありなのです。

 

 

円高が進めば政府と日銀による円安誘導がまた行われるでしょうが、日米貿易交渉にて為替操作の禁止を要求されているので、それもできなくなるでしょう。

 

日米貿易交渉でアベノミクスによる為替操作が停止命令された件

 

 

以上のようにイギリスのEU離脱の影響はイギリスだけではなく世界的に大きいといえます。イギリスだけでも離脱するメリット(移民排斥)とデメリット(貿易摩擦・国家解体)を合わせてみるとデメリットの方が明らかに大きいように感じます。イギリスのEU離脱騒動はどうなるのか今後も注目していきたいところですが、結局は離脱取りやめにするのではないかと私は予想しています。

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