横田空域のまとめ。米軍が合法的に日本上空を支配するカラクリ

日本の首都圏の上空は米軍に支配されています。いきなりそう言われると信じれない人も多いでしょうが、首都圏における米軍の支配空域を「横田空域」と呼び、日本の航空機は米軍の許可なしではそこを通過することができません。

 

JALANAの定期便はいちいち許可を取るのも大手間になるのでこの巨大な空域を避けて不自然な迂回ルートを飛ぶことを強いられています。

 

横田空域についてはテレビや新聞でも取り上げられることがあるのでご存知の方も少なくないでしょうが、今回は改めて横田空域と他にも岩国空域、嘉手納空域についてもまとめていこうと思います。

 

 

横田空域の範囲

 

横田空域は東京都西側(福生市など)にある米軍・横田基地が管轄下に置いている空域です。以下の図を見るとわかるように一番高いところで7000mという巨大な米軍専用空域が日本の空を東西真っ二つに分断しています。

 

出典:『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』 (講談社現代新書) 著者 : 矢部 宏治

 

横田空域の南側は羽田空港や成田空港に着陸する航空機が密集しています。緊急時に例えば落雷の危険がある積乱雲が前方にあって、そこを避けて横田空域に避難したい時でも「横田空域には入らず、そのまま飛べ」と管制官から指示されてしまうというような非常に危険な状態です。

 

東京の場合、横田空域の境界線は上板橋、沼袋、中野、代田橋、等々力辺りを走っていて、高級住宅街の世田谷区や杉並区、練馬区などはほぼ全域がこの横田空域内に入っています。

 

出典:『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』 (講談社現代新書) 著者 : 矢部 宏治

 

この境界線の内側上空なら米軍はどんな軍事演習(オスプレイで低空飛行など)をすることも可能です。

 

さらに米軍は演習に当たって日本政府からその許可を取る必要は全くありません。既にこの空域内の富士演習場~厚木基地ルートなどで頻繁に低空飛行訓練をしているという驚愕の事実もあります。ちなみにオスプレイは2020年から横田基地に配備されることが決まっています。

 

墜落事故が起きても公表されないという事実

 

驚くことに、もしこの空域内でオスプレイが墜落して死者が出ても事故の原因が日本側に公表されることはありません。さらに正当な補償が支払われることもないのです。

 

俄かには信じ難いことですが、実際に1977年に横田空域内(現在の横浜市青葉区)で米軍ファントム機の墜落事故が起こり、「死者2名、重軽傷者6名、家屋全焼1棟、損壊3棟」という大事故だったのにもかかわらず、パラシュートで脱出した米兵2名はいつの間にかアメリカへ帰国した上に、被害者たちは裁判で事故の調査報告書の公表を求めましたが「日付も作成者の名前もない報告書の要旨」が示されただけで、正当な補償もありませんでした。

 

このように日本国内で米軍によって管理されている空域は横田空域だけでなく「岩国空域」と「嘉手納空域」もあります。

 

岩国空域の範囲

 

横田空域と同じくこの「岩国空域」も山口県、愛媛県、広島県、島根県の4県にまたがる巨大な米軍管理の空域です。

 

出典:『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』 (講談社現代新書) 著者 : 矢部 宏治

 

愛媛県にある松山空港に向かう民間航空機は米軍・岩国基地の管制官の指示に従って飛ぶ必要があり、東から大分空港へ向かう民間航空機も高度制限など大きな制約を強いられています。

 

沖縄全土を覆う嘉手納空域

 

沖縄の嘉手納空域は2010年に返還されましたが、それは表向きだけの話で事実上いまだに米軍の支配下に置かれています。嘉手納空域は以下の図を見ればわかりますが沖縄本島上空は全て米軍に支配されているということになります。

 

出典:『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』 (講談社現代新書) 著者 : 矢部 宏治

 

この嘉手納空域でも民間機の制限は大きく受けていて、本土から那覇空港に着陸する民間航空機の航路が嘉手納や普天間の米軍基地に離着陸する米軍機の航路と交差するため基地の30キロ以上手前から高度300m以下という低空飛行を強いられています。

 

このことは那覇へ向かう飛行機に乗ってみるとわかります。もし機会があれば意識してみてください。

 

米軍が沖縄の空を支配し続けるカラクリ

 

このように自国の首都圏上空を含む巨大な空域が外国軍に支配されているというのはあり得ない事態です。米軍はどういう法律を根拠にして日本の空域を管理しているのでしょうか。どういう法律の根拠があるにせよ嘉手納空域に関しては2010年に返還されているのにもかかわらず、実質今だに支配されたままです。これは一体どういうことなのでしょうか?

 

実は嘉手納空域返還の裏側で「米軍優先空域」が密かに設定されており、返還の意味を失わされていたのです。その優先空域の名を「アライバルセクター(着陸空域)」といいます。

 

出典:『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』 (講談社現代新書) 著者 : 矢部 宏治

 

上の写真をご覧の通り、嘉手納基地を中心に長さ108キロ、幅36キロ、高さ1200m(高度600mから1800m)の大きさを持つ巨大な米軍優先空域です。沖縄本島の北部を除いてすっぽりと覆われています。嘉手納空域を返還すると同時にこれほど巨大な米軍優先空域が密かに設定されていたのです。

 

さらに日本側が全ての管制業務を行うはずだった那覇空港の管制所には今でも「米側管制官(退役軍人)」が常駐していて米軍機優先の大原則のもと、以前と同じように管制業務を行なっています。

 

このことからも分かるように日本に巨大な空域を返還したというのは建前に過ぎず、米軍は依然と沖縄の上空を支配し続けているのです。

 

横田空域、岩国空域以外の本土上空も支配されているという事実

 

沖縄は本島がほぼ全て上空支配されていますが、本土はどうなのでしょうか。米軍の支配が及ぶのは横田空域や岩国空域だけなのでしょうか。実はそうではありません。本土でも全国ほとんどの上空が米軍に支配されています。以下の図が日本上空にある米軍の「低空飛行訓練ルート」です。

 

出典:『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』 (講談社現代新書) 著者 : 矢部 宏治

 

これほど広い範囲で低空飛行訓練を行なっているのは初めて知る方にとっては衝撃的だと思いますが、2011年にはこの訓練ルートで年間1500回以上の軍事演習が行われています。さらに翌年12年にはこの回数に普天間基地に配備されたオスプレイの訓練回数が加わっています。

 

しかも実際には米軍機が基地から各地の訓練ルートに辿り着くまでにさまざまな場所の上空を飛んでいくわけです。つまり事実上米軍機は日本全土の上空全体を自由に飛ぶとができると言えます。

 

沖縄だけではなく「日本全土の空」が戦後70年以上経った今でも米軍に支配されているということは驚きを隠せません。独立国ではあり得ない事態ですが、一体なぜこのようなことが平然と行われているのでしょうか。

 

その理由は「日本政府は、軍事演習をおこなう米軍機については、優先的に管制権をあたえる」という日米合同委員会での密約に基づいているからです。

 

密約なので基本的に日本国民には知らされていません。しかし密約といえどそれがある限りは「合法」的に米軍が日本上空を支配することができてしまうのです。そしてその密約だけでなく、日本の国内法でも米軍の特権を認めてしまっています。それが航空法特例法第3項です。

 

「前項の航空機(=合衆国軍機と国連軍機)及びその航空機に乗り組んでその運航に従事する者については、航空法第六章の規定は、政令で定めるものを除き、適用しない。」

 

というもので「航空法第6章」とは航空機の運行について定めた法律です。その内容は「離着陸する場所」「飛行機禁止区域」「最低高度」「制限速度」「飛行計画の通報と承認」など航空機が安全に運行するための43ヶ条を定めたものです。

 

しかし、その全ての内容が米軍機には適用されないことが国内法で定められているのです。つまり米軍機は日本上空においてどれだけ危険な飛行(低空飛行など)をしても合法だということを日本政府側が認めてしまっているのです。

 

この条文のもとで米軍は1952年のサンフランシスコ講和条約で占領状態を解消後も、依然として日本の上空で自由に飛ぶ権利を持ち続けてきました。条文は60年以上経った今も変わっていないので、現在においても米軍は合法的に日本全土で低空飛行訓練を行えるのです。

 

空域を支配される弊害は低空飛行による危険性だけではありません。他にも例えば、日本政府は羽田空港発着の新ルートをつくってインバウンドを増やそうとしましたが、その新ルートは横田空域の一部に入っていたために米軍からの許可が下りず、新ルート開設を諦めざるを得ませんでした。

 

1952年のアメリカからの独立、60年の「新安保」は見せかけに過ぎず、米軍の権力は占領期時代と何も変わっていないのです。事実上日本はアメリカの植民地のままと言えるでしょう…。

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