コチャバンバ市(ボリビア)
日本人にはウユニ塩湖で有名なボリビア。その同国の第三の都市のコチャバンバ市の例が最も残酷かつ非情な話かもしれません。
20世紀末、世界銀行の融資を受け入れたボリビアは、融資受け入れと引き換えにほとんどの公益事業を民営化させられてしまい、水道事業も民営化することになりました。
この際、水道事業を請け負ったのが米ベクテル社の子会社子会社アグアス・デル・トゥナリ社です(ベクテル社の株主はブッシュ元大統領をはじめとするネオコンです)。
アグアス・デル・トゥナリ社が請け負ったのちにサービス向上のためのダム建設を理由に法外な水道料金を徴収し始めました。市民の所得に応じた値上げでしたが、貧困層からは10%、富裕層に至っては200%の値上げ。市民の支払う水道料金の総額は一気に倍以上に値上がりしました。
1日2ドル以下で暮らす貧困層を中心として支払い不能者が続出したのですが、トゥナリ社は水道料金を支払わないものに対しては情け容赦なく水の供給を停止し、さらには自分たちの管理下にある井戸水の安い料金までも引き上げたのです。
水道料金を支払えない人々は汚染水・腐敗水などを飲まざるを得ず、その結果、病気に苦しむ人々が増え、中には死に絶える人々も少なくなかったといいます。
水道事業が民営化された翌2000年1月に、「水と生活を防衛する市民連合」が結成され、大衆の抗議運動が大きなうねりを巻き起こし、何百万人もの国民がそれに賛同しコチャバンバ市をデモ行進しました。
その抗議運動はますます大きくなるばかりで、事態の沈静化を図るべくボリビア政府は水道料金の値下げを約束しました。が、しかし政府はIMFや世界銀行の圧力によりその約束を破るばかりでなく、戒厳令を出し、抗議を続ける市民たちを数十名も逮捕しました。死傷者も出て、9名が殺害、約100名が怪我を負わされることに。メディアの規制もかけられ、恐怖社会に様変わりしたのです。
しかしこのような暴虐的な弾圧は長くは続かず、民衆を顧みることなくIMFと世界銀行に従った当時のボリビア政権は転覆しかけ、結局市民たちが勝利を手にすることができました。
その結果、40年間の契約を破棄し再公営化を果たしましたが、水道管の更新費や開発費の巨額の借金を市民たちが背負うことになった上に、ボリビア政府は契約破棄の違約金として2500万ドルの賠償金を要求されました。
トゥクマン(アルゼンチン)
トゥクマンでは水道経営の深刻な失敗から水道利用者は料金支払いを拒否しました。その結果として民間契約が解消されたのですが、委託を受けていたビベンディ(現ヴェオリア)は投資紛争解決国際センター(ICSID)に3億7,500万ドルの損害賠償を請求し、結局アルゼンチン政府は1億500万ドルを支払うよう命じられました。このように多国籍企業は巨額の賠償請求を出し儲けるという訴訟ビジネスのようなことをしているのです。
このように水道事業を多国籍企業である水メジャーに委託することは、水道料金の高騰、水質の悪化、巨額の損害賠償請求などを招く可能性が高いことがわかります。
日本でもすでに松山市や浜松市がヴォエリア社に運営権を委託していますが、どちらもすでに水道料金が値上げ傾向にあるようです。
他の自治体がどうなるかまだ分かりませんが、安易に民間委託する前に今回挙げたようなリスクを考慮する必要があるでしょう。
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