中国の信用スコア・顔認証による超管理社会の恐るべき実態

中国では習近平政権時代になって以来、超管理社会が築かれつつあります。その実態に迫りました。

 

恐怖の信用スコア(スコアリング)システム

 

中国の信用スコアというと、アリババの系列企業が始めた「芝麻信用」(セサミクレジット)が有名です。これは中国のアマゾンドットコムといわれるアリババグループが提供する信用スコアシステムで、2018年時点でアクティブユーザーが5億人を超えていて、中国政府は20年までに中国の人口14億人全てに適用しようとしています。

 

この信用スコアは中国で広く普及する決済システム「ALIPAY」の利用状況、ネットショッピングの淘宝(タオバオ)の利用状況、公共料金、金融サービスの利用状況や裁判判決の履行の有無(賠償金を払ったかどうか)など様々な点からスコアリング(点数化)されるといったものです。

 

こういったスコアリングシステムは日本でもクレジットカードを作成する際やローンを組むときに利用されていますが、中国におけるそれの大きな違いは「購入履歴」や「裁判判決の履行の有無」などが付け加えられていることです。

 

詳しい採点基準は明らかにされていませんが、大きく分けて5つの要素「個人特性」「支払い能力」「返済履歴」「人脈」「素行」からスコアリングされます。

 

そのスコアリングにおいて点数の高い人はホテルやレンタカーを利用する際に求められるデポジットが免除されたり、中国人にとってどこの国に行くのにも必要とされるビザ取得の簡易化や海外旅行の際に免税申請を並ばずにできるといった特典が与えられます。

 

逆に低スコアの人は公共交通機関の利用の制限を受けたり、ビザ取得ができないということになってしまいます。公共サービスというのは基本的に万人に平等に与えられるものですが、スコアリング制度の下にある中国ではそうではありません。その最たる例をご紹介しましょう。

 

 

航空機の搭乗拒否される低スコア民

 

スコアリングシステムによって自分の名前がブラックリスト入りされることで、飛行機にも乗れなくなったという人がいました。それが中国で報道記者として活動する劉虎(リュウ・フー)氏です。劉氏は2017年に広州行の航空券を買おうとしたら、複数の航空機会社に予約拒否をされ、その時初めて自分がブラックリストに登録されていたことに気づいたようです。劉氏はその前年2016年に公務員の腐敗を訴えるSNSに関する記事を発信することで、その情報を拡散されては都合が悪い中国政府に目を付けられました。その結果、政府から罰金の支払いと謝罪を命じられ、劉氏はそれに従わざるを得ませんでした。

 

これで一件落着、と思いきや、彼は中国政府から「不誠実な人物」に格付けされ、様々なサービスを享受することができなくなってしまったのです。それは飛行機だけでなく、高速鉄道の利用や不動産の購入もできなくなり、挙句の果てには子どもを良い学校に入れることもできなくなってしまったのです。(情報源:14億人を格付けする中国の「社会信用システム」本格始動へ準備

 

この話の中で注目すべきは劉氏は命令通り賠償金を支払い、謝罪したのにも関わらず、ブラックリストにされ続けているということです。つまり、客観的な情報に基づくスコアリングだけではなく、政府にとって都合の悪い存在を恣意的にブラックリストにしているということになります。

 

このように、高スコア民に優遇し、低スコア民を排斥していく。

 

中国版のスコアリングと今までの他国のスコアリングとの大きな違いは、まさにこの点でしょう。政府に従順な人間を量産し、政府にとって都合が悪い存在を排除していくという。まさにジョージ・オーウェルの小説『1984年』のディストピアの世界が実現しつつあるのかもしれません。

 

スコアリングによって確かに治安が良い社会は築かれていくでしょう。しかし言論の自由がなく、常に監視されているという感覚の中では人間らしい生活を送ることができないと私は思います。

 

中国の監視社会は今に始まったわけではありませんが、それが昨今、最新テクノロジーによってさらに強化されているようです。監視社会を強めている技術はスコアリングだけではありません。

 

顔認証と中国全土を網羅する監視カメラ

 

中国はキャッシュレス先進国の一つで、決済全体の6割がキャッシュレス決済で、都市部のほぼすべての店舗でQR決済が行われます。そんな中国で次世代決済として始まっているのが顔認証決済です。

 

顔認証で支払いができるシステムを開発したのが、またもやアリババです。モバイル決済のできる「ALIPAY」アカウントに事前に顔情報を登録すれば利用が可能になります。顔認証で決済ができるので、財布もスマホも必要ありません。

 

日本でもファミリーマートとパナソニックが顔認証で決済が可能な実験店舗を2019年4月にオープンさせました。

 

一見、便利に思われる顔認証決済システムですが、中国では膨大な量の監視カメラと顔認証システムを使って、指名手配されていた容疑者がコンサート会場で逮捕されるというケースが相次いでいます。なんと、一年間で犯罪容疑者や指名手配されていた容疑者60人もコンサート会場で捕まりました。(情報源:コンサート会場で60人以上の手配犯を顔認証で逮捕=中国

 

さらに香港メディアのサウスチャイナ・モーニング・ポストによると、顔認証システムは4年間で中国警察当局による1万人の犯罪者逮捕に貢献したといいます。

 

ニュースだけを見ると、治安が良くなっていいのではないかと思えますが、中国共産党にとって不都合な存在が監視カメラと顔認証システムで居場所を特定されて秘密裏に逮捕されるということも考えられなくはありません。

 

ちなみに通信業界における世界最大手のファーウェイの幹部はビッグデータと人工知能(AI)による顔認証技術によって「その人物の情報をつかんでいなかったとしても、身元を特定することはできる。氏名、学歴、家族関係、好み、渡航歴などもだ」と語っています。

 

中国に設置されている監視カメラの数は2016年時点で約1億7600万台(アメリカは約5000万台)です。それが更に増加しつつあります。実際に習政権は17年、国内の治安関連に推計で約20兆円を投じ、20年までに4億5000万台にまで増やし、中国全土を網羅するカメラネットワークを導入しようとしているのです。

 

センスタイム社の通行人・通行車両認識システム Photographer: Gilles Sabrie/Bloomberg

 

赤信号を渡るなど小さな交通違反まで監視し、顔認証で特定し、スコアリングしていくのです。

 

街角での些細な会話まで盗み取られるかもしれません。そう、反政府分子を排除するために・・・。

 

中国式監視システムの海外への広がり

 

香港における、一国二制度の危機

 

このような最新技術を使った中国式の監視システムは世界にも広がりを見せようとしています。まずは一国二制度で高度な自治を保っていた香港。

 

香港では今まさに反中国のデモが行われています。具体的には逃亡犯条例の改正案に対するデモですが、簡単に説明すると、これが適用されることで、香港の人々が中国本土の法律で捕らえられて、中国に連れていかれて、裁かれます。香港の人々はこの改正によって自分たちの自由が消えてしまうと危惧しています。

 

香港では比較的言論の自由があり、中国を批判する人や本も少なくありませんでしたが、その条例改正によって言論の自由さえも危ぶまれることになります。

 

そして、スコアリングや監視カメラ、顔認証システムにおける管理社会が香港にも適用されることになるでしょう。

 

デモの本質はそのような中国の支配下に置かれることに対して香港の人々が反発しているとみることもできます。

 

中国政府によるチベットやウイグル自治区への民族弾圧ほどの残虐性はないでしょうが、それと近い弾圧が香港にまで及んでいるのかもしれません。

 

一帯一路経済圏への広がり

 

中国の監視カメラ企業である「天地偉業」や顔認証技術や自動運転技術を開発する世界最大のスタートアップ企業でもある「センスタイム」などは海外進出をしています。また、アリババは世界電子商取引プラットフォーム(eWTP)をベルギーに拠点を置くだけでなく、マレーシアやアフリカのルワンダにまで推進を着手しています。

 

次世代通信ネットワークシステムの5Gに関する特許技術を数多く持つファーウェイは既にケニアやカメルーン、マリやコートジボワールの首都に監視ネットワークを導入しており、その成功を大々的にアピールしています。

 

このように中国発の通信・監視技術が着々と海外に広がりつつあります。それは中国政府や民間企業が諸外国と連携して推進する「一帯一路」経済圏に広がっていると見ることができます。逆に一帯一路構想とは距離を置くアングロサクソン系の国は中国発の技術の流入を拒む姿勢を見せています。

 

中国技術の侵入を拒むファイブ・アイズ

 

まず中国のファーウェイが世界に広めようとしている5Gに対して懸念を持ち始めたのはオーストラリアでした。オーストラリア政府はハッカーにハッキング実験をさせ、5G通信網の内部機器にアクセスできた場合の損害をシミュレーションしました。

 

その結果、重要インフラに多大な悪影響をもたらされることが判明しました。なぜなら5Gは今後、電力から水の供給、下水などのあらゆるインフラの中枢にある情報通信にとって必要不可欠な要素になるからです。インフラが5G通信網を通してハッキングされると急に水道や電気が止まったりすることも考えられます。

 

オーストラリア政府は、5G技術を世界に広めるファーウェイと中国政府のサイバースパイ活動の繋がりを疑い、このシミュレーションから半年後、ファーウェイを同国の5G計画から事実上締め出しました。

 

世間ではファーウェイ規制はアメリカ主導だと思われがちですが、実際はオーストラリアがアメリカ政府幹部にも情報共有したことからアメリカもファーウェイ規制に乗り出しました。

 

そして米国家安全保障局(NSA)の高官は2019年4月24日のスコットランドでの会議の場で、機密情報を共有する「ファイブ・アイズ」の五カ国(アメリカ・カナダ・イギリス・オーストラリア・ニュージーランド)はいずれも、中国のファーウェイの技術を通信ネットワークの「機密に関わる」部分に使用しないとの見解を示しました。

 

さらにアメリカはファーウェイだけでなく、中興通訊(ZTE)、海能達通信(ハイテラ)、杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)、浙江大華技術(ダーファ・テクノロジー)の計5社から製品を調達することを禁じる規制を8月に発効し、そのいずれもいずれも通信機器、監視カメラの大手メーカーでした。

 

つまり、アメリカは中国の通信・監視技術を国家脅威として侵入を完全に防ごうとしているわけですね。

 

日本もまたアメリカの圧力によってファーウェイとZTEの製品を締め出そうとしています。

 

中国のこれらの技術は一帯一路に積極的に参加している国々に広がり、アメリカをはじめとするファイブアイズやそれに従う日本ではあまり広がらないでしょう。

 

それらを受け入れる国々は監視システムが行き渡り、治安が良くなっていく一方、国家機密が盗み取られたり、国民の生活インフラの首根っこが捕まえられることになるでしょう。当面は何も問題は起こらないかもしれませんが、中国にとって都合が悪くなった国は脅しにかかられることになるかもしれません。

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