今韓国がデフォルト危機にあります。デフォルト危機が言われるようになったのは去年のことからで、経済不安が既に広がっていた中で、今年に入ってから新型コロナウイルスが韓国にも蔓延して、経済危機の度合いが更に高まりました。
韓国がデフォルトして、破綻するとなると、北朝鮮に取り込まれることで、北朝鮮主導の「統一朝鮮」が樹立される可能性があります。
今回は韓国経済がいかに危機状況にあるのかを整理して、仮にデフォルトした場合のその後の展開を予測していこうと思います。
韓国経済の危機状況
韓国がデフォルトするのではないかという話は去年からされていました。日本が韓国をホワイト国から除外した騒動を受けて、韓国の通貨ウォンが急落し、デフォルトの可能性が懸念されていたのです。
そもそも韓国では文在寅政権になって以降、経済がどう見てもうまく回っていませんでした。
左派の文在寅政権の支持基盤は労働組合と左翼の市民団体で、反財閥です。その左寄りの政策の一環として最低賃金が一気に引き上げられたり、短時間労働制が導入されたりして企業が収益を確保することは一段と難しくなって、経済が疲弊してしまいました。最低賃金は2018年には16.4%、2019年にはさらに10.9%引き上げが行われたのですが、景気が悪化している時にこれほどの率で引き上げられると、中小企業を中心に疲弊していきます。
実際、韓国の製造業を支えてきた鋳物、金型、メッキなど「根幹産業」の基盤が大揺れ状態です。国家根幹産業振興センターによれば、2018年だけでも1000社以上の「根幹企業」が廃業したものと推定されています。
一方、韓国経済を牽引してきたサムスンは生産拠点をベトナムに移すことで、しのぎを削っていますが、その分韓国の下請け企業の受注数が減ってしまっているのです。
2015年時点で、サムスン一社で韓国全体のGDPの5%を占めているわけですから、それほどの主力企業が生産拠点を外国に移すという影響は計り知れません。
また、中央日報によれば、韓国経済の土台である30・40代就業者数は2017年10月以降、24カ月連続で減少傾向であることが明らかになっています。
GDP成長率で見てみても、2019年はリーマンショック後最低の2%を記録しています。
どう見ても文在寅政権以降の韓国経済は悪化しており、その不安定さから韓国はデフォルトするのではないかとも噂されていました。そうやってデフォルトが囁かれるのには経済不安からだけではなく、韓国政府の予算において根本的な問題があるからでもあります。
その問題とは予算の多くを外国人投資家の投資に依存しているということです。韓国は金融産業が弱く、負担を担える官民金融機関が事実上ないので、国債を発行しても自国だけではお金がそこまで集まりません。そのため韓国政府は資金調達をドル建て国債を発行することで外国人投資家のお金を集めています。
つまり韓国は外国資本に依存しており、事実として国債の約半分を外国人が所有しています。韓国のように国債を外国人に依存をすると何が問題なのかというと、経済不安が広がると、外国人投資家は国債を手放して投資金を引き上げるので、国債価格が暴落し(金利が急上昇)、デフォルトの可能性が高まるわけです。一方、日本の国債は自国通貨建てで、その保有者の9割が日本人なのですが、そのような国であればデフォルトすることはほぼありません。それとは逆に韓国やアルゼンチンのように外貨建て国債で、保有者の大半が外国人という国は少しの経済不安だけでもデフォルトする可能性が一気に高まります。
このように韓国社会は構造的に致命的な問題があるので、過去に貿易黒字だったのにもかかわらず、アジア通貨危機の時にデフォルトしていますし、2008年のリーマンショックの時と2010年のユーロ危機の煽りを受けて2011年にもデフォルトしかけて、日本やアメリカ、中国が資金援助し、何とかデフォルトを防げたという経緯があります。
このように韓国は経済基盤が脆弱がゆえに海外の不況の煽りを受けやすいのですが、今回の新型コロナウイルスは韓国をまたもやデフォルトに追い込む可能性がある脅威として受け止められています。
韓国経済はGDPに対する貿易額は7割もあるほど、輸出にかなり依存しているのですが、その輸出を中国にかなり依存しています。そのお得意先の中国が新型コロナウイルスの蔓延によって危機的状況なので、韓国はその影響をもろに受けます。実際、今年2月の貿易統計で中国向け輸出額が前年同月比で6.6%減少しています。この減少傾向はこれからも続くことになるでしょう。
さらに韓国人の入国禁止を決めた国は世界で100か国を超えており、考えられる影響として、例えば企業の海外出張のほとんどがキャンセルされることになります。これは輸出依存度が高い韓国経済にとってはかなりの痛手です。
ウォンの暴落を韓国の年金基金が買い支えているという現状なのですが、これもいつまでも続くわけがありません。
では次にデフォルトするとなると今後の展開はどうなるのか。考えられるのが北朝鮮主導の南北統一国家「統一朝鮮」の樹立です。
統一朝鮮
「統一朝鮮」の樹立に向けて韓国も北朝鮮も動きを合わせているという話は過去の記事でも取り上げましたが、ここでも簡単に整理していこうと思います。
南北統一の話は今に始まったことではなく、1980年に金日成が「高麗民主連邦共和国」構想(以下、高麗連邦構想)という南北統一プランを提案していました。そのプランは一民族・一国家・二制度・二政府の下で連邦制による統一を主張したものです。
これは中国と香港の一国二制度に近いかもしれません。
2000年に金大中大統領と金正日総書記による初の南北首脳会談が行われ、両首脳により連邦制による南北統一を目標に協議がされています。
続く第二回首脳会談(2007年)でも廬武鉉大統領と金正日総書記による第二回の南北首脳会談でも統一について話し合われ、第三回の南北首脳会談(2018年)の焦点も「北の核廃棄」ではなく「南北統一」の道筋をつけることでした。
一連の会談では建前としては一国二制度の統一プランが話し合われているのですが、金正恩の本音としては一国二制度で統一を標榜する高麗連邦構想ではなく、北朝鮮主導の一国一制度にしたいところでしょう。
金正恩としては核武装したうえで、韓国の経済力を取り入れれば、周辺の中国やロシアとも対等になり、日本に更なる圧力をかけることができるようになるので、独裁政治をより盤石なものにできます。
そんなことを韓国が受け入れるはずがないと思うかもしれませんが、韓国の文在寅大統領も北朝鮮の社会主義的独裁政権を正当化する「主体(チュチェ)思想」を支持しているため、その構想を受け入れる方針であると考えられます。
主体思想はマルクス・レーニン主義を朝鮮式に変えたものであり、社会主義を前提とした政治の自主、経済の自立、国防の自衛が強調される一方で、民族の自主性を維持するためには卓越な指導者に服従しなければいけないと唱えられています。それが金日成の個人崇拝と金正日の後継体制を正当化するためのイデオロギーとして用いられてきました。驚くことに、その主体思想に文在寅政権のブレーンたちは傾倒しているのです。
実際、文在寅政権のブレーンの多くが親北運動の経歴を持っています。親北運動は1980年代、北朝鮮の主体思想に傾倒した学生団体のリーダーを中心に展開されたのですが、文在寅が大統領に就任後の一か月間に任命した大統領府・内閣・政府機関の67の要職のうち、約半分を占める32人がその親北運動を牽引してきた学生運動家でした。
それらの学生運動家はアメリカの庇護のもとにある当時の軍事政権を嘆き政権転覆活動に与する一方で、どこの国に頼るでもなく、主体的に朝鮮民族の国家を運営しているようにみえた北朝鮮とその指導者の金日成に憧憬の念を抱いていました。
北朝鮮としても「日本帝国主義と戦闘していない韓国に正統性はない」という立場であり、北朝鮮の国家としての正統性の根拠を「朝鮮民族の首領、金日成国家主席が率いる抗日パルチザンが、百戦百勝の快進撃で日本帝国主義を打倒し、共和国を建国した」という神話に置いています。
韓国の左派にとっても北朝鮮こそが正当な朝鮮民族の国なのですから、北朝鮮主導の南北統一、つまり「統一朝鮮」の樹立も厭わないという立場なのだと考えることができます。また、北朝鮮の核技術を取り込むことで朝鮮国家としての存在感を国際社会で高めたいのだとも考えられます。韓国が核武装することはアメリカが許さないでしょうが、統一朝鮮ができてしまえば、アメリカもそれ以上は介入できなくなります。それどころかアメリカは統一朝鮮の樹立を後押しする可能性もあります。
なぜなら統一朝鮮の登場が中国の崩壊へと導く可能性があるからです。というのも、中国と北朝鮮の国境の中国側には「延辺朝鮮族自治区」という多くの朝鮮人が住んでいる地区があります。その地域は満州国時代は日本の占領下にあり、日本の敗戦後は中国の人民解放軍が満州を攻め込み、朝鮮人居住区は「延辺朝鮮族自治区」として中華人民共和国の領土に組み込まれました。
北朝鮮の金日成はこれに不満でしたが、朝鮮戦争で毛沢東に助けてもらった借りがあったので何も言えませんでした。現在、同自治区は人口は約210万人で、そのうち三分の一以上が朝鮮語を話す朝鮮系の人々です。延辺の朝鮮人は中国と北朝鮮、韓国と北朝鮮のパイプ役としても活動し、各国の北朝鮮への経済制裁が強まる中、北朝鮮の経済活動を援助すべく非合法活動に関与している者も少なくないといわれています。
仮に「統一朝鮮」が出来上がると、「延辺朝鮮族自治区」でも朝鮮ナショナリズムが高揚し、延辺の朝鮮人も呼応して、中国からの独立と、統一朝鮮への編入を求める声が高まるでしょう。
もともとこの地域は古代には朝鮮民族の先祖とされる高句麗が支配した地域ですので、「高句麗はわが祖先」という韓国側のプロパガンダが昔からあり、この地域の領有問題と絡んできます。一方、習近平は2017年の米中首脳会談でトランプに対し「かつて朝鮮半島は中国の一部だった」と語っており、朝鮮民族としては恥辱以外の何物でもありません。中国と韓国の歴史学界でも歴史的にどちらが「延辺朝鮮族自治区」の領有の正当性があるのかという激しい歴史論争が続いています。
高句麗は実際はツングース系の民族による国であることが有力視されており、少なくとも純粋な朝鮮民族による国だったとは考えにくいのですが、韓国内では朝鮮民族だったと教えられているので、ナショナリズムが高揚すると、中国の「延辺朝鮮族自治区」を取り返そうとするでしょうし、同地区の朝鮮民族もそれに呼応するでしょう。核武装した統一朝鮮が強気に出てきた場合、中国もそれを政治的に抑え込むのは難しくなると考えられます。
仮に「延辺朝鮮族自治区」が統一朝鮮に組み込まれるとなると、チベット自治区や内モンゴル自治区、新疆ウイグル自治区でも独立機運が高まることが考えられます。新型コロナウイルスの拡大で弱体化している今であれば尚更チャンスだと考えるでしょう。
そのように中国が内部から分裂して弱体化していくことを今のトランプ政権は望んでいるはずであり、その引き金となる統一朝鮮の樹立を容認、もしくは後押しする可能性があるのです。
1970年代に北の主導で南北統一されたベトナムでも同じようなことが起こりました。南北統一直後からベトナムは中国との関係が悪くなり、カンボジアを巻き込んだ中越戦争で、中国から支援を受けていたカンボジアのポルポト政権を崩壊させたり、親中派を国内から追い出すことに成功しています。ベトナム労働政権は南シナ海問題でも中国と対立し、かつての敵国アメリカに急接近しています。
現在でもベトナムは南シナ海問題において敢然と中国と対峙しています。これをアメリカも重要視しており、アメリカの軍艦が頻繁に米軍基地があったダナンに寄港しているのもそのためです。
そのベトナムと同じように、統一朝鮮の樹立が中国の弱体化に繋がるのであれば、アメリカは統一を裏で協力することになるでしょう。
また、金正恩としても社会主義国の北ベトナム主導で南北統一したベトナムの発展ぶりを未来の統一朝鮮に重ねているからこそ、第二回目の米朝首脳会談の場をベトナムのハノイに選んだと考えることができます。金正恩はその未来図を側近やトランプ大統領と共有したかったのでしょう。
新型コロナウイルスの蔓延の影響で韓国経済が崩壊してデフォルトするとなると、その混乱に乗じて、北朝鮮が何らかの動きを見せて、韓国を吸収する形で統一朝鮮を樹立する可能性も否めません。韓国の現政権としても韓国経済を立て直すには社会主義しかないということで、韓国を北朝鮮へ差し出すことも考えられなくもありません。
そんな北朝鮮でも金正恩が危篤状態だとか、既にもう亡き者になっており、今は影武者が政権を動かしているとか色々な憶測があり、新型コロナウイルスの蔓延の影響も甚大だといわれているので、北朝鮮も国家崩壊の危機にあるとみることができ、韓国を吸収するどころではなくなるかもしれません。
何らかの形で金正恩による独裁政権が崩壊するとなると、韓国主導で統一朝鮮が樹立されることも考えられます。
一国二制度の連邦国家になるか、もしくは南北どちらかの主導による統一国家が出来上がるのかはまだ分かりませんが、どのような形にせよ、南北統一するというのは両国における既定路線です。どうなるにせよ、東アジアの情勢はこれから大変動することになるでしょう。
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