種子法廃止のメリット・デメリット〜TPP・ゲノム編集の影〜

20184月、種子法廃止が決まりました。北海道や新潟県、長野県などの自治体では種子法廃止に危機を感じ、各々で種子法を条例化する動きを見せています。

 

種子法を条例化している都道府県はまだ少数ではありますが、今後増えていくかもしれません。この記事では種子法廃止についてなるべく公正に見るべく、メリット・デメリットを整理しようと思います。

 

 

そもそも種子法とは?

 

種子法のWikipediaの概要によると

 

サンフランシスコ講和条約が発効された翌月である1952(昭和27年)5月に制定された。コメ大豆といった主要作物について、優良な種子の安定的な生産と普及を“国が果たすべき役割”と定めている法律である。都道府県による普及すべき優良品種(奨励品種)の選定や、その原原種および原種・一般種子の生産と安定供給に都道府県が責任を持つことが定められている(Wikipediaより引用)

 

この種子法に基づいて国は都道府県に予算を出し、各都道府県はお金と時間をかけ、それぞれ地域に合った優良品種を奨励品種として指定し、厳密に審査して生産してきました。

 

それによってササニシキやコシヒカリなど優れた品種が生まれ、それらの種子が生産者に安価で提供され、そのおかげで美味しいお米が私たちの食卓に並んでいたのです。

 

その種子法がなぜ廃止されたのでしょうか?

 

廃止された表向きの理由と本当の理由

 

日本政府は種子法について、コメなどの品質が安定し、むしろ生産農家の意欲をそぎ、「既に役割を終えた」と述べた上で、種子法を廃止することで「国際競争力を持つために民間との連携が必要」と説明して種子生産に民間企業の参入を促そうとしています。つまり規制をなくして自由競争を加速させようとしています。

 

しかし民間の参入自体は1986年の種子法改定で可能になっており、過去にもいくつかの企業が参入・事業拡大を表明しています(例えばトヨタグループの総合商社である豊田通商が2015年に打ち出した「しきゆたか」)。

 

ではなぜ種子法を廃止したのでしょうか。実はこの種子法を廃止させた背景にはTPPがあります。そのTPP協定の中の第11 章「越境サービス」、第15 章「公共調達」、第17 章「国有事業」、第18 章「知的財産権」の章があって、それぞれに種子法廃止とかかわり合っており、この内容に沿う形で国内法の整備を急いだといわれています。だから強行採決的だったのです。

 

TPPの中身の説明はここでは割愛させて頂きますが、TPPは多国籍企業が有利になるような仕組みになっています。その多国籍企業にとって種子法は障壁になってしまいます。なぜなら種子法があると、それに基づいて安価で種子が農家に提供されるからです。

 

種子法がなくなれば、それまで生産費を税金でカバーしていた分がなくなるので、それまで公的に守られてきた種子の価格は自ずと高騰します。価格があまり変わらなくなるとなると民間企業の種子がより農家の手に取られやすくなります。

 

では種子法廃止にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

 

種子法廃止のメリット

 

メリットとして挙げられることは「日本の民間企業が発展しやすくなること」です。

 

前述したように、今までは種子法によって都道府県が品種を育て、その種子を農家に供給するように定められていました。種子法のおかげで安定的に農家が種を入手することができた一方で、民間の種苗企業が主要作物である米、大豆、麦などの主要農作物に参入しにくい状態にありました。

 

例えば、タキイ、サカタなどの日本企業の種のシェアが広がっていくことでしょう。そのもう一方で、外資系の日本モンサントの「とねのめぐみ」やそのモンサントと業務提携している三井化学の「みつひかり」などのコメの種もこれから普及することになるでしょう。

 

日本モンサントはアメリカに本拠を置くモンサント(独バイエル社に買収され、統合されている)の日本支社で、三井化学はそのモンサント社と業務提携しています。モンサントといえば遺伝子組み換え作物で世界の覇権を握っている大企業ですが、この「とねのめぐみ」も「みつひかり」も遺伝子組み換えではありません。

 

デメリット①国から予算が出なくなる

 

種子法を廃止したといっても都道府県がこれまで実施してきた稲、麦類及び大豆の種子に関する業務のすべてを、「直ちに取りやめることを求めているわけではない」ようです。ただ「直ちに取りやめることを求めているわけではない」ということは、いずれやめなければならない可能性も暗示されているように捉えることもできます。

 

また、種子法を廃止したことで、国としては各都道府県に予算を出す法的根拠がなくなりました。

 

各都道府県が各々の努力で奨励種子を生産し、提供することを禁止しているわけではないので、前述したように北海道や新潟県、長野県などの自治体では種子法廃止に危機を感じ、各々で種子法を条例化しています。

 

しかし条例化していない都道府県の中では今まで得られていた種子法に基づいた予算分が得られなくなることで、種子の生産と供給を止める自治体も出てくるでしょう。

 

そうなるとその自治体内では完全に民間企業にシェアを譲ることになると考えられます。またシェアを譲るだけでなく、各都道府県が培ってきた種子の知見が民間企業に流れてしまいます。どういう事なのでしょうか?

 

デメリット②種子の知見が外国資本に流れる

 

国内における種子は今まで多額の税金をかけて、育て守り続けてきた国民の知的財産です。しかし種子法廃止によってその知的財産が外国資本に流出しようとしているのです。というのも種子法廃止法案は単体で国会に提出されたわけではなく「農業競争力強化」政策に関する他7つの法案と同時に提出されています。

 

その中の「農業競争力強化」の第8条4項に以下のことが書かれています。

 

「種子その他の種苗について、民間事業者が行う技術開発及び新品種の育成その他の種苗の生産及び供給を促進するとともに、独立行政法人の試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進すること。」

 

 この民間事業者への提供というのは外国資本もまた含まれます。もし何らかの規制で外国資本だけを除くとTPPの最重要貿易ルールの一つである「内国民待遇(※)」に違反してしまいます。

(※内国民待遇とは:条約の一方の当事国が,自国の領域内で自国民や自国産品に対して与えるのと同じ権利や特権を他方の当事国の国民や産品に対しても与えること)

 

種子の知見を譲るとどうなるのかというと、民間企業に原種のゲノム編集が行われ、特許権を主張される恐れがあります。

 

実際にメキシコでもアメリカの多国籍企業モンサントやデュポンが数千もあったトウモロコシの原種をゲノム解析して、これらの原種をもとにF1、遺伝子組み換えなどの新しい品種も開発して、特許を主張しました。そしてその応用特許に使用料を支払わなければメキシコの農家はトウモロコシの栽培ができなくなったのです。

 

ちなみに遺伝子を改変する「ゲノム編集技術」は食品衛生法を基に厚生労働省が制定した規格基準における「組換えDNA技術」に該当しないと判断されています。遺伝子組み換えの米の栽培は食品衛生法によって規制されていますが、ゲノム編集されたコメは規制がないということになります。

 

今のところはゲノム編集コメは開発されていませんが、小麦はグルテンの主成分の一つ「アルファ・グリアジン」というタンパク質をゲノム編集で削除したという小麦は開発されています(詳細はこちら→グルテンなしの小麦?〜日経サイエンス2018年3月号より」)。

 

他にも「甘くて長持ちするトマト」や、「切っても涙の出ないタマネギ」「毒のないジャガイモ」、収量アップを目指した「多収イネ」などの開発も進んでいます。

 

厚生労働省によると早くて2019年内にこういったゲノム編集された食品が日本の食卓に並ぶとされています。情報元ゲノム編集食品、年内にも食卓へ 厚労省に届け出で」

 

これらゲノム編集された作物はまだ出回っていないことから危険性は未知数です。

 

農作物だけでなく、ゲノム編集の対象は動物にも及び、養殖中の衝突死を防ぐ「おとなしいマグロ」や、筋肉量を増加させた「肉厚のマダイ」、卵アレルギーの原因物質を抑えた「アレルギー対策卵を産むニワトリ」など、続々と開発が進んでいます。

 

一見魅力的に見えますが、本当に人間がここまでやっていいのでしょうか?危険性はないのでしょうか?ゲノム編集は人間の赤ちゃんにまで及んでいるようで、倫理的かつ健康的な問題といえます。(参考:「ヒト生殖細胞や受精卵のゲノム編集研究はストップすべき? 海外で一大論争に」

 

ゲノム編集技術に警鐘を鳴らす識者も少なくありませんので今後も注意が必要でしょう。

 

話はやや逸れましたが、多国籍企業などの民間企業に種子の知見を提供するということはその種子を元にゲノム編集作物が開発されていく可能性を考える必要があるでしょう。

 

こういった事態を防ぐためにも北海道や新潟県、長野県のように各自治体で種子法を条例化する事が重要なのです。

 

以上にメリットとデメリットを挙げましたが、私個人的にはメリットよりもデメリットの方が大きいように感じます。日本企業が成長するチャンスという論調もありますが、民間企業が伸びることよりも今までと同様の方法で種子は公的に守る方が安全かつ安定的に各家庭にお米が届けられると思いますし、種子法を廃止することでゲノム編集された作物がどんどん開発され、広がっていくことに懸念を感じます。

 

皆様はどのように感じますか?メリット・デメリットで挙がっていないと思うことがあればコメントでご教授頂ければと思います。

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