イスラエル、ヨルダン川西岸地区併合計画実行宣言

今回は大きく動こうとしている中東情勢についてお話します。

イスラエルのネタニヤフ首相は5月25日、ヨルダン川西岸の一部を併合する計画を、数ヵ月以内に推進するということを明らかにしました。

ヨルダン川西岸の土地の編入は、イスラエルの入植者が長い間夢見ていたものでした。

 

3500年以上前のユダヤ人の祖先がヨルダン川西岸で暮らしていたという聖書の記述を根拠に、歴史的に繋がりが深い土地であるとして、その土地に戻ることを願っていたのです。

日本のメディアではほとんど報じられていませんが、アメリカのメディアイスラエルのメディアが報じるところによると、ネタニヤフ首相は、ヨルダン川西岸を併合する「歴史的な機会」は、1948年のイスラエル建国以来、一度も起きたことがないと強調し、「イスラエルの主権を適用する時が来た。シオニズム史に新たな栄光の一章を記す」などと併合への強い意欲を示しました。

実際、今年の5月にネタニヤフ首相が率いるリクードは、ベニー・ガンツ氏が率いる中道野党連合の「青と白」と連立政権を発足し、新しい連立協定では、早ければ7月1日に併合の根拠法を可決することに言及しています。

ガンツ氏はこれまで、一方的な併合については反対してきましたが、連立合意でネタニヤフ首相に押し切られる形で、「米政府が承認すること」を条件に、国会の承認ないしは閣議決定を経て、7月1日以降にいつでも併合を可能とすることに同意したのです。

ただ、国際的にパレスチナ自治区の領土とされるヨルダン川西岸地区を併合するのであれば、パレスチナとその同盟国が猛反発しますし、新たな中東戦争が勃発することは必至なので、そう簡単に動けるものではありません。

例えば、ヨルダンのアブドラ国王は、イスラエルが引き下がらない場合、「大規模な紛争に発展することは避けられない」と警告しています。

 

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サウジアラビアやアラブ首長国連邦などの湾岸主要国は、ヨルダンほどの反対姿勢は見せていませんが、併合を拒否する立場を明確にしています。

イスラエルは1967年の中東戦争で西岸を占領しましたが、国際的な反対が強く、正式にイスラエルの領土として主張したことはありませんでした。

 

といっても、これまでになし崩し的に50万人近くのユダヤ人入植者が移住しています。例えば、イエス・キリストの生誕地とされる町、ベツレヘムは、ユダヤ人の入植地に取り囲まれた格好になっています。

一方で西岸地区には約270万人のパレスチナ人が住んでおり、自治政府も持っています。

 

しかし、西岸地区は面積の60%以上がイスラエルの軍事支配下に置かれていますし、経済面でもイスラエルに依存しているのが現状です。

それでも西岸地区がイスラエルの領土とは国際的には認められていません。

 

しかし、トランプ大統領は西岸地区にとって最も重要な場所のエルサレムをイスラエルの首都と認定し、アメリカ大使館を現首都のテルアビブから移転させました。

 

三つの宗教の聖地でもあるエルサレムに大使館を置くことは国連で定められている国連安保理決議478に反することだったのですが、トランプ大統領はそれに反する形で、批判を押しのけて、断行したのです。

 

それに対して、イスラム諸国が猛反発し、各地で激しい抗議デモが起こったことは記憶に新しいと思います。

さらに今年の1月にトランプ大統領が発表した中東和平案では、ヨルダン川西岸の30%をイスラエルに与え、それ以降もエルサレムをイスラエルの首都とし続ける一方で、残りの地区をパレスチナとして、独立国家として認めるという「折衷案」を明らかにしました。

その案は義理の息子で、中東政策担当かつ、大統領上級顧問のジャレッド・クシュナー氏が主導して立案されたものだといいます。

この緑のエリアがトランプ政権が示したパレスチナの領土です。

 

 

トランプ大統領によると、政権の指針は 「パレスチナ人もイスラエル人も故郷から根絶させない 」というものですが、その提案で示された範囲は、国際社会がこれまでにパレスチナ人に提示してきた領土の中で、最も限定的な領土だといわれています。

これに対し、パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長は、トランプ政権の和平案を「謀略」としてはねつけ、こう述べました。

 

「トランプとネタニヤフに告げる。エルサレムは売り物ではない。私たちの権利は売り物ではないし、安売りもしない。あなた方の取引、謀略は通用しない。」

 

そもそも、パレスチナ側は西側地区のすべてを求めているので、約三分の一もの領土を譲るのは、彼らにとってあり得ない選択肢です。

しかし、ネタニヤフ首相はトランプ政権の折衷案に則って、西岸地区の30%の部分の併合に移ろうとしているのだと考えられます。

もし本当にイスラエル側が併合に動くのであれば、新たな中東戦争が勃発するのは必至で、イスラエルとしても、イスラム諸国によって潰される可能性もあるので、アメリカの協力を得ない限りは、ネタニヤフ首相の独断で併合を強行することはできないと考えられます。

つまり、カギとなるのは、トランプ政権です。

ネタニヤフ首相としては、今年の11月3日の、米大統領選の投票日がやってくる前に実行したいと考えていると思われます。

 

もしトランプ大統領が民主党のバイデン氏に負ければ、トランプ政権のこれまでのイスラエル政策がすべて覆される可能性もあるからです。

 

実際、バイデン氏は併合に反対の意を表明しています。

一方で、トランプ大統領は、自他共に認める、歴代で最も親イスラエルな大統領ですし、イスラエルのために1000%働くということも明言しています。

 

2019年11月にはトランプ大統領は「イスラエルがヨルダン川西岸で行っている入植活動は国際法違反とは見なさない」と表明し、長年アメリカがとってきた立場を、180度転換しました。

ネタニヤフ首相にとっても親イスラエルのトランプ政権があるうちに併合に動きたいという焦りがあることは明らかです。

また、ネタニヤフ首相は現在収賄、詐欺、背任の罪に問われており、刑事裁判の初公判が5月24日にエルサレム地方裁判所で開かれたばかりです。

 

これが有罪になるのかは分かりませんが、この裁判がネタニヤフ首相を長年の計画の実行に急がせている一つの要因だと思われます。

ただ、トランプ政権としては国内の抗議デモやパンデミックの対応に追われていますし、今はやめてほしいというのが本音なのかもしれません。

ARAB NEWSによれば、6月7日の時点では、ネタニヤフ首相はアメリカの許可をまだ得ていないということを明らかにしています。

問題は、トランプ政権が歴史的な原油安で窮地に立たされている米国のシェールオイル産業を復活させようという意思があるかどうかだと思います。

 

もし、イスラエルに併合の許可を与え、イスラム諸国が暴発すれば、中東の原油の供給がストップすることになると考えられます。

 

となると、今まさに、破綻危機にあるシェールオイル産業を間接的に救済することになるのです。

 

そこまで考えているのかどうかは分かりませんが、もしその意思があれば、併合の許可を与えることになるでしょう。

 

イスラエルのメディア、ハアレツの報道によれば、トランプ政権が提案している「和平案」をネタニヤフ首相が完全に受け入れる準備ができている場合にのみ、米国から併合のサポートが与えられることになっているといいます。

具体的にどのようなサポートなのかは分かりませんが、イスラエル、アメリカ連合vsイスラム諸国の大規模な紛争に発展する可能性も否めません。

そうなれば、当然イスラエルの宿敵である、大国イランも関わってくると考えられるので、中東を舞台にした、第三次世界大戦に発展してもおかしくはありません。

 

イランとしても、コロナ禍で国内の経済活動が停滞し、国民の政府批判も広がっているので、国民の怒りの矛先を、外に向けさせたいと考えているかもしれません。

 

とりあえずは最も注視すべきはトランプ政権の動きですが、現在の緊張状態をみると、パレスチナ側の過激派が先に攻撃を仕掛ける可能性もあるので、どちらが直接的な紛争の原因になるかわからない状況です。

イランに支援されているヒズボラやハマスなどの動きも注意が必要です。

 

エルサレムポストによると、現にシーア派組織のヒズボラは、15万発以上のミサイルをイスラエルの都市に照準を合わせているといいます。

このように、いつ紛争に発展してもおかしくはない状況ですが、何事もないように、祈るしかありません。

以上、なるべく簡潔に中東情勢についてお話しましたが、最新の情報が入ったらまた別の動画でお話するかもしれません。

 

中東も大変ですが、米中対立も今後激しくなりそうですし、まるでパンデミックが合図になっているかのように、世界情勢が大きく動こうとしているようにみえます。

最近の動画でも取り上げているように、世界の混乱の裏では、監視社会システムがどんどん構築されてきています。

 

その一方で、日本のマスメディアは不倫報道などの些末な問題を取り上げることに終始しており、まるで別の世界をみているように感じます。

 

この世界がどこに向かっていくのかは分かりませんが、それは一人一人の意識にかかっています。

 

それぞれが知恵を出し合って、協力し合っていく時が来ているのではないでしょうか。

 

さて、今回はこれで終わりにします。

 

今回も最後までご覧頂き、ありがとうございました。

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