トランプとロスチャイルド、シオニストとの関係。本当に救世主?

 

トランプとシオニストの関係

 

トランプ氏の周りにはシオニズムを進めるシオニストたちがいます。シオニズムとは「世界中に離散したユダヤ民族が、聖書に示されたエルサレムの地シオンに帰還し、そこでユダヤ人国家を再建しようとする運動」のことです。シオンとは聖地エルサレムをとりまく丘の一つで、かつてダビデ王が王宮と神殿を建てた場所です。ローマ帝国に追いやられて以降、ユダヤ民族は現在のイスラエルから世界各地に離散したわけですが、そこに再結集しようという運動があるのです。

 

こうした運動は当然中世以降のエルサレムの主要な住民であるアラブ民族と対立しています。中東の争いのほぼすべての遠因がこのシオニズムにあると言っても過言ではありません。

 

 

その話をすると長くなるので別の機会にするとして、まずトランプに対し影響力を持つシオニストとして挙げられるのがトランプの娘婿のクシュナーです。ジェレッド・クシュナーは大統領上級顧問(中東政策担当)を務めていますが、一方では聖書で予言されているハルマゲドン(世界最終戦争)を待望している超過激なハバド・ルバヴッィチ(ユダヤ教超正統派)の宗派に属しています。

 

ユダヤ教といっても一枚岩ではなく、ユダヤの神が地上を浄化する本当のハルマゲドンを静かに待っている比較的おとなしいユダヤ教徒もいれば、ハバド・ルバヴッィチのように争いの火種をつくって人工的にハルマゲドンを招こうとしている超過激なユダヤ教徒もいます。

 

ハバド・ルバヴッィチに属するクシュナーはそのような過激な思考を持っていると思われ、大統領の娘婿という肩書を利用してホワイトハウスの内部からイスラエル政策を動かそうとしているのです。

 

またクシュナーの父はイスラエルのネタニヤフ首相の友人であり、クシュナー自身もネタニヤフを自身の家に泊めさせるほどの仲です。そしてクシュナー家はイスラエル建国に寄付もするほど熱心なシオニストです。

 

クシュナー家と懇意のネタニヤフ首相もまたタカ派の人物として知られ、イランやパレスチナへの強硬姿勢を示しており、パレスチナの一部を併合することをはっきりと明言しています。また、イスラエルは第三次中東戦争(1967年)でシリア領のゴラン高原を侵略し、今もなお実効支配していますが、過去に国連ではそれは違法と決議された一方で、トランプ政権はそれを合法として支持しました。軍事的に外国の土地を奪うことを容認したということはトランプがどれほどイスラエルにべったりなのかがよく分かりますね。

 

ちなみにイスラエルがゴラン高原に侵略した理由は、ゴラン高原の石油利権も絡んでいるといわれており、米ジニー・エナジー社という会社が石油を発掘をしているのですが、その大株主にジェイコブ・ロスチャイルドがいます。そのロスチャイルドも言わずと知れたシオニストで、アシュケナジー系(ドイツ・東欧系)のユダヤ人です。

 

ロスチャイルド家はイスラエルの右派(ネタニヤフ首相など)を支援しており、トランプもまた支援しています。つまりこの三者は「シオニズム」というキーワードで繋がり、利害が一致しているのです。

 

ユダヤ教でないトランプがなぜシオニズムに加担するのかというと、トランプの最大の支持母体はキリスト教福音派(エヴァンジェリカル)であり、福音派は「ユダヤ人国家イスラエルは神の意志で建国された」としてイスラエルへの支援を信仰の柱に据えているからです。

 

福音派の中でも原理主義者は、旧約聖書・新約聖書の一字一句をそのまま信じ、更に聖書は神が書いたシナリオだとして聖書が示す通りに展開すると本気で考えています。それだけでなく、自分たちこそがそのシナリオを進めるための神に選ばれた代行者であるとも信じてやまないのです。

 

ということで、聖書に書かれた終末予言(ハルマゲドンの戦い)も、その後に地球上でキリスト教徒だけが暮らす至福の時代がやってきて、最後の審判では自分たちだけが天国行きを許されるということも信じています。そしてその予言を成就することが自らに課せられた使命として、そのためにはイスラエル国、つまりエルサレムが絶対に必要だと真剣に考えています。

 

こういった考え方や運動はクリスチャン・シオニズムとも呼ばれ、クリスチャン・シオニズムはユダヤ教の過激派のハバド・ルバヴッィチと考え方がほとんど同じのために、ユダヤ教側もそれを受け入れています。

 

そのような背景を理解すると、トランプがなぜエルサレムに大使館を移動させただけでなく、首都と認定したのかが分かります。ユダヤ教や福音派からすると、エルサレムに首都を移すことは聖書の予言を実現するための大きな一歩であるということで、ユダヤ教や福音派の人々は大喜びしました。

 

トランプ大統領がエルサレムを首都に認定した結果、エルサレムを将来の独立国家の首都と位置づけるパレスチナは強く反発し、騒乱が勃発しました。歴史を振り返ると、第二次世界大戦後、イスラエルが侵略戦争(中東戦争)を起こして、力づくで領土を奪ってきた経緯があり、国連安保理決議478によると、エルサレムに外交施設を作ることを禁じています。つまりトランプは国連安保理決議に明白に違反しているわけですが、そんなことは意に介さず、イスラエルを前面に支援しています。

 

トランプ自身も福音主義的な考えを持っていると思われ、福音派からするとトランプは自分たちの代表者だという認識なのです。ちなみに福音派は米国では宗教別人口の約4分の1を占め、主流派のプロテスタントを上回る最大勢力です。そして、2016年の大統領選では白人の福音派の約8割がトランプに投票したとされています。

 

イスラエル側でもトランプは大人気で、エルサレムの建設予定の駅にドナルド・トランプ駅という命名をする計画もでてきたほどです。トランプは歴代の米大統領のなかで一番イスラエルに協力的だという評価もあります。

 

 

また、トランプの最大の支援者でカジノ王のシェルドン・アデルソンもまた強硬なシオニストです。日本のカジノ解禁にも一枚かんでいる人物です。ビジネスだけでなく政治面でもかなり影響力のある人物で、トランプの大統領選挙の際は2000万ドル、大統領就任式開催の際には500万ドルを寄付をするほどの支援ぶりです。米国におけるシオニスト運動最大組織となった「全米シオニスト同盟」を事実上設立したのもアデルソンといわれており、トランプにアメリカ大使館をエルサレムに移転させるように働きかけた人物でもあります。

 

 

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