IT化する「新・軍産複合体」とトランプ政権の関係

前回の記事では軍産複合体の歴史を解説しましたが、今回はトランプ政権と軍産複合体の関係と、最新テクノロジーでIT化する軍産複合体の実態に迫ります。

 

軍産複合体とトランプ政権の癒着関係

 

ワシントン・タイムズ紙は、軍需企業とペンタゴンの同盟関係が今までにないほどのレベルで強くなってきていると指摘しています。(英文記事はこちら

 

例えば、ペンタゴンの人事を見てみるとトランプ政権の初代国防長官だったジェームズ・マティス氏が政権を去った後、2019年1月から6月半ばまで軍需産業大手、ボーイング社の上級副社長だったパトリック・シャナハン氏が国防長官を務めていました。そのあとは、元陸軍中佐でこれまた軍需大手企業のレイセオン社の副社長マーク・エスパー氏がペンタゴンの国防長官になりました。レイセオン社の副社長時代は政府に対してロビー活動をしていた人物です。

 

このように昔から民間企業と政府機関を行ったり来たりする流れは確かにありましたが、回転速度はトランプ政権になってから速まっているようで、毎年、数百人単位の人間が軍需企業からペンタゴンに、そしてペンタゴンから軍需企業に転職しています。

 

ワシントンにある非営利団体「政府監視プロジェクト(POGO)」の調べにおいて、2018年だけで645人の上級職がペンタゴンなどの政府機関から上位20位以内の軍需企業に転職していたことが明らかになっています。

 

基本的にはトランプ支持の姿勢であるワシントン・タイムズでさえ「軍産複合体の肥大化により、連邦議会は歯止めが効かなくなる危険性がある」という内容の記事を載せており、アメリカ政府に対する軍産複合体の影響力の強まりが国内で懸念されていることがわかります。

 

その影響力を示すように、連邦上院において2019年夏、サウジアラビアとアラブ首長国連邦に緊急の武器輸出法案を可決しましたが、その中にはレイセオン製の爆弾も含まれています。そのレイセオンのロビイストだった人物が国防長官になっている流れは、軍産複合体の影響力を物語っているといってもいいでしょう。

 

さらにトランプ政権が要求する2020年会計年度の米国防費は7500億ドル(約80兆円)で、過去最高です。その国防費の多くは軍需産業に流れていきます。

 

トランプ氏は大統領就任当初はエスタブリッシュメント(支配層)や軍産複合体に反旗を翻す存在ともてはやされましたが、実態はその逆で、軍産複合体と癒着している(もしくは屈服した)といってもいい状態なのです。

 

ちなみに、軍需産業はアメリカ産業を支える重要な支柱であることも事実であり、例えば、ユナイテッド・テクノロジーズが技術協力するロッキード・マーティン社製のステルス戦闘機「F35」は、46州に点在する工場で様々なパーツやシステムが作られ、総計で約12万5000人が雇用されています。

 

 

イランとの緊張関係が望ましい軍産複合体

 

そのような状況にある中で、今回のソレイマニ司令官殺害事件については、アメリカ国内では殺害を肯定する声が多く、ペンタゴンもそれに賛同しています。

 

ペンタゴンは「ガセム・ソレイマニは、イラクで米軍人少なくとも603人を殺害し、数千人に障害を負わせた責任がある」とツイートし、2003~11年にイラクで死亡した米軍人の17%は、ソレイマニ司令官率いるコッズ部隊に殺害された可能性があるとしています。

 

強硬な保守派で軍産複合体とも近いといわれるマイク・ペンス米副大統領もツイッターに異例の連続投稿を行い、ソレイマニ司令官は2001年9月11日の米同時多発攻撃の実行犯を支援していたと主張しました。

 

しかしこれに対し、米メディアは事実と異なると厳しく指摘しています。

 

例えばニューヨーク・タイムズは、米同時多発攻撃に関する独立調査委員会の585ページにわたる報告書に、当時既にコッズ部隊を率いていたソレイマニ司令官の名前はないと指摘しています。

 

となるとマイク・ペンス副大統領は事実に基づかないデマゴーグでソレイマニ司令官の殺害を肯定したことになり、戦争か、もしくは戦争になるかならないかの緊張状態を望む軍産複合体の代弁をした可能性すらあります。

 

結局、アメリカとイランは戦争にまでは発展しませんでしたが、表向きのトランプ大統領の発言からすると、シリア、イラク、アフガニスタンなど危険で無用な地域からアメリカ軍を撤退させる方針でしたが、今回の騒動を受けて米軍のイラクへの駐留が長引くことになりそうです。つまりトランプ氏の意向とは逆に、軍産複合体が望む流れになっています。

 

こうみるとトランプ氏は軍産複合体に屈したとみることもできますが、実はそうではなく支持率を高めるために表向きの発言として撤退の方針を示していたのではないかと思われます。

 

なぜならペンタゴンは、今回の作戦はドナルド・トランプ大統領の命令によって実施されたことを明言しており、トランプ氏自身も弾劾騒動から目を逸らせたかったと考えられるからです。そうなると軍産複合体とトランプ氏の利害が一致したとみることができ、トランプ氏の本音としては大統領再選のためであれば何でもよく、軍産複合体に魂を売ることも厭わないということなのかもしれません。

 

 

IT産業と結託する「新・軍産複合体」の実態

 

このような軍産複合体は現代においてはグーグルやフェイスブックなどのIT企業と癒着を強めている模様です。

 

例えば、グーグルはAIとドローン技術について、国防総省と契約を結んでいることを認めており(2018年)、長年にわたって軍事産業にかかわることを避けてきたグーグルの企業文化が壊されていることが明らかになっています。

 

また、FacebookやTwitterなどのSNSはチュニジアやリビア、エジプトなどで起きたアラブの春という大規模な反政府デモが起きるきっかけになりましたが、数百人分の架空のフェイスブックアカウントをAIで操るソフトを開発済みで、エジプト革命の際にFacebookを使った大衆扇動の実験として使用されたといわれています。

 

それが本当かどうかは分かりませんが、FacebookがそもそもCIAによって考案されたということが明らかになっていますから、その可能性は高いでしょう。

 

実際、CIA長官補佐が国土安全保障省のレポートにおいて

フェイスブックはCIAが考案し、目的は全世界個人情報収集

秘密裏に大衆をマインドトレーニングする事で、大衆は自分からインターネットに個人情報を載せてくれるようになった。

Facebookこそが我々がインターネットを開発した理由であり、このシステムによって全世界のユーザーの個人情報が手に入る

 

と述べていることからも、Facebookが大衆扇動ツールとして使われている可能性は非常に高いです。

 

CIAによってCIA Memorial wall にて表彰を受けたFacebookの創業者マーク・ザッカーバーグもまた、表彰場にて「FBは過去生み出されたものの中で最も強力な大衆操作ツールだ」と発言しています。

 

ザッカーバーグ自身がそのように言っているのですから、疑いようがありません。

 

このようなIT技術と軍産複合体の癒着は実は今に始まった話ではなく、そもそもインターネットの前身ARPANETは、ペンタゴンの研究機関、現在のDARPAからの資金で開発されたのは有名な話です。

 

最近のスタートアップシーンにおいても、CIAはかなり関与しており、実際CIAの資金で運用されているIn-Q-Tel(IQT)という会社はシリコンバレーを中心に新進気鋭のIT企業に投資をしています。

 

有名な投資先として例えば、Keyholeという会社が挙げられ、Google Earthの元になった技術を開発していました。2004年にGoogleに買収され、Google Earthが世に広まります。スマホなどに使われているタッチスクリーンの技術の多くも、IQTの投資から始まっているそうです。

 

今後はAI技術がさらに軍需産業に導入され、戦争自体もどんどんAI化していき、戦争がAIロボット同士の戦いになる日も遠くないでしょう。

 

このような新兵器をどんどん売っていくために軍産複合体は、Facebookなどで大衆扇動するなどして反政府デモや戦争のムードを作り、兵器の需要をつくっていきます。実際に南北朝鮮のように緊張状態が続くのであれば戦争にならなくてもいいし、なれば出来るだけ長引かせる。そして儲かる。それが軍産複合体の実態です。

 

特にシリア、イラク、イランなどの中東地域は軍産複合体の餌食になっているといっても過言ではないでしょう。

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