そもそも原告は徴用工ではないという事実
これはメディアの責任も大きいところもありますが原告側はそもそも「徴用工」ではありません。ここが誤解が多いところですが、原告側は自らの意思で日本へ出稼ぎに行った「募集工」です。朝鮮人(当時の認識では朝鮮半島出身の日本人)に対する国民徴用令は1944年9月からのことであり、日本製鉄で働いていた原告側はそれ以前に日本に来ていたので出稼ぎの「募集工」だったのです。原告側はその当時の不当な扱いに対する補償と未払い賃金を求めて訴訟を起こしているので、強制徴用が問題になっているのは誤解です。
韓国最高裁が賠償判決を下した理由
結局のところ韓国司法がなぜ賠償命令を下したのかというと、併合時代の日本の統治が「違法」であるという前提に集約できます。
新日鉄住金徴用工事件再上告審判決 (大法院2018年10月30日判決)を見ればそれが明らかです。一部抜粋してご紹介します。
請求権協定の交渉過程で日本政府は植民支配の不法性を認めないまま、 強制動員被害の法的賠償を根本的に否認し、このため韓日両国の政府は日帝の韓半島支配の性格に関して合意に至ることができなかった。このような状 況で強制動員慰謝料請求権が請求権協定の適用対象に含まれたとは認めがたい。
請求権協定の一方の当事者である日本政府が不法行為の存在およびそれに 対する賠償責任の存在を否認する状況で、被害者側である大韓民国政府が自ら強制動員慰謝料請求権までも含む内容で請求権協定を締結したとは考えられないからである。
つまり、日本政府が違法的に朝鮮半島を「植民支配していた」ということを前提に判決を下しているのです。
日本による韓国併合は合法か違法か?
当時の日本による朝鮮併合時代が「合法」か「違法」かというのは意見が分かれるところではありますが、国際的には合法で、日本ももちろん合法としています。
違法とするのは韓国と北朝鮮以外にほとんどありません。韓国政府公式の見解は戦後から一貫して「違法」です。これは憲法レベルの話であり、憲法が9回変わった韓国でもこの内容が変わったことがありません。韓国憲法の前文を見ればそれがわかります。
「悠久の歴史と伝統に輝くわが大韓民国は3・1運動により建立された大韓民国臨時政府の法統を継承する」
という文があって、それが意味するのは、3・1運動が1919年のことなので1910年から45年までの日本による韓国統治は違法であり、法的に無効であるということを主張していることになります。
しかし当時の国際社会では完全に「合法」でした。その動かぬ証拠が朝鮮王朝当時の記録にあります。大韓帝国の最後の皇帝による詔令です。その内容がこちらです。
<詔令を下すは、「朕が東洋平和を強固にするために韓日両国の親密な関係をもってお互いに統合し一つの家を作るのは、相互萬世の幸福を図るわけであると考えた。故に韓国統治を持ち上げて、朕が極めて信頼する大日本国皇帝陛下に譲与することを決定し、これに必要な條章を規定して、将来の私たち皇室の永久安寧と生民の福利を保証するために、内閣総理大臣李完用(イ・ワンヨン)に全権委員を任命し、大日本帝国統監寺内正毅と会同し相議して協定するようにするわけだから、諸臣もまた、朕の決断を体得して奉行しろ」、とした>。(引用元:シンシアリー『「徴用工」の悪心』)
朕は王の一人称ですが、つまり朝鮮の皇帝が韓国統治権を日本の天皇に譲与し、総理大臣に全権を与えて日本と協力するようにという内容です。
韓国側には日本が強引に併合したようなイメージが持たれていますが、事実は平和裏に行われていました。当時の時代背景を見ると、欧米列強がアジアに進出し、朝鮮半島はロシアに狙われていたので、むしろそのような勢力から朝鮮半島を守るという側面もあったのです。日本としては朝鮮半島を併合することは極東を狙うロシアを牽制するために重要事項でありました。そして朝鮮もまた欧米列強の魔の手から守るには自国の防衛力だけでは到底不可能でした。つまり「併合」はお互い利害が一致していたのです。
これに対して善悪判断はできないでしょう。見るべきは併合が「合法」か「違法」かという一点に尽きます。
イギリスのケンブリッジ大学のJ・クロフォード教授(国際法)が
「自分で生きていけない国について周辺の国が国際的秩序の観点からその国を取り込むということは当時よくあったことで、日韓併合条約は国際法上は不法なものではなかった」
と主張しているように国際的には合法です。韓国の日韓併合条約無効論を主張する人の根拠はその条約の署名は外務大臣のみで国王によるものがないというものですが、それも併合条約に国王の署名や批准がなかったことについても、国際法上必ずしも必要なものではないというのが国際法のスタンダードです。
韓国内でも併合を合法とし肯定的に見ている歴史学者も少なくないですが、反日派から糾弾されています。
また韓国側が問題視しているのは日本による「強制労働」ですが、募集工は強制労働ではないことは明白ですし、日本が批准していたILO(国際労働機関)でも戦時徴用は違法ではありませんでした。
このようにどこをどう見ても日本に対する違法性を見出すことができないのです。だから日本の併合を違法だとして日韓基本条約を反故にする韓国の司法判断は理に叶っていないと言えます。
確かに日本企業による不当な扱いや未払いはあったかもしれません。しかしそれに対する補償は日韓請求権協定で「最終的かつ完全に解決」しているのです。
韓国側がそれを認めない限りはこの議論は平行線のままかもしれません。それを認めてしまったら、併合が合法だと認めることに繋がりますし、そうなると自国の歴史や憲法そのものを否定することになりますからそうするのは難しいでしょう。国際的なルールよりも感情論で動き、歴史歪曲をやめようとしない韓国社会。
決してこちらも感情的な反韓になるのではなく、正しい歴史認識と冷静な対応で接していくべきでしょう。
日韓関係、今後はどうなる?
日本政府は韓国を「ホワイト国」から外して輸出規制をしようとしていますが、このことに対して韓国側は「徴用工の判決に対する経済報復だ」と決めつけて大規模な反日デモが繰り広げられています。
日本政府もこのタイミングでしてしまったのは問題で、どういう意図があろうと結果的に反日感情を煽ってしまいました。
韓国政府もまた仕返しとして日本を「ホワイト国」から外す方針だそうで、今後は日韓の経済戦争が起こってしまうかもしれません。日本政府がやるべきは経済戦争ではなく、正しい歴史を世界に発信し続けることだと私は思います。過去の日本政府はありもしない従軍慰安婦を認めてしまったがゆえにどんどん弱みに漬け込もうとされているわけですから、正しい歴史認識と毅然とした対応が必要でしょう。その歴史観は韓国人のアイデンティティーを壊しかねないものなのでそれを認めるかどうかは難しいところではありますが、そうするしかありません。経済報復と誤解されるような対応は火に油です。
日韓関係が戦後最悪になるとも言われていますが、政治的には関係が悪くても、それとは別に経済と文化交流は良好なまま存続していってほしいものです。