TPP11に反対的なマレーシアのマハティール首相の葛藤

2018年10月31日、日本を含む6か国が国内手続を完了し、条件を満たしたのでTPP11(CPTPP)協定は2018年12月30日に発効されることになりました。

 

国内手続きを完了している国はメキシコ、シンガポール、ニュージーランド、カナダ、日本で、6カ国目となるオーストラリアが10月31日に手続き完了を報告しました。

 

しかし、残る5カ国ベトナム、ペルー、チリ、ブルネイ、マレーシアは国内手続きを終えていません。中でも2018年に政権が変わったマレーシアは消極的な姿勢を見せています。

 

マレーシアはTPP11の何に対して懸念を示しているのでしょうか?その消極的な理由を探ることでTPP11の問題点が見えてきます。

 

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マレーシアのマハティール首相の思惑

 

上述したようにマレーシアは2018年5月に新政権が誕生し、過去に22年間首相経験があるマハティール氏が首相に返り咲きました。

 

そもそもTPPに参加を決めたのはマハティール首相ではなく前政権のナジブ・ラザク元首相の時代でした。2016年2月4日のTPP署名式の前の1月27 日にTPPの承認を求めて国会で採決をとり参加へと進んだのです。

 

これに怒ったマハティール氏は与党に離党届を出して、TPPを推し進めようとするナジブ政権を激しく非難し、2018年5月に政権打倒を果たしたのです。

 

そのマレーシアのマハティール首相は

 

雇用創出には新たな投資が必要で日本の最新テクノロジーに学びたい」

 

と日本からの積極的な投資を呼びかけ、TPP11による外資の投資を歓迎する一方で

 

「富める国(先進国)とそうでない国がある中で、同じ条件であることが公平なのか」

 

とTPPに対し慎重な発言もしています。

 

2013年8月26日には

 

「TPPに署名すれば、外国の干渉なしでは国家としての決定ができなくなり、再び植民地化を招くようなものだ」

 

との考えを語っていることからも多国籍企業による経済的侵略を危惧していることが読み取れます。

 

そのマハティール首相の考えは過去の経歴からも読み取れることができます。

 

アジア通貨危機を凌いだマハティール首相の経験則

 

マハティール首相の過去の首相在任期間は1981年7月16日 – 2003年10月31日で、15年ぶりに首相の地位に返り咲き、年齢が90代の人物が選挙で勝利して国家のトップに就任した例は世界でもほとんどありません。異例の存在です。

 

その在任期間中に1997年のアジア通貨危機を経験しています。この時の経験が今のTPP11に消極的な理由があるようです。

 

というのも、タイのバーツ暴落を機に始まったアジア通貨危機は主に東アジアの経済に打撃を与え、特にタイ、インドネシア、韓国が深刻なダメージを受け、IMF(国際通貨基金)に資金提供を受けることになりました。

 

IMFの資金提供を受けるということは、IMF管理下に置かれることを意味し、財政政策や構造改革などはIMF指導のもとに行われることになります。

 

実際、IMFの支援を受け入れた3国は緊縮財政と通貨価値維持のための高金利政策、外資への市場開放など、急進的な新自由主義的構造改革を受け入れさせられています。その結果、公共サービスが民営化されるなどしました。

 

韓国はIMFに最も忠実であったことからその影響が最も強く、多くの国営企業は民営化され、金融と大企業が外資に乗っ取られてしまいました。それ以降韓国では富裕層と貧困層の格差が拡大し、二極化問題を引き起こし、それは現在にまで尾を引いています。

 

マレーシアもまたアジア通貨危機の影響で、同国の通貨リンギットは1米ドル=2.50リンギットから1米ドル=4.20リンギットと1年で40%も暴落し経済危機に陥っていました。しかし当時のマハティール首相はIMFの融資を断って独自路線で経済を回復させました。

 

実はマハティール氏は通貨危機の原因をヘッジファンドによる空売りが原因であると看破していたのです。そして扇動的な空売りを行い経済危機を引き起こした張本人の投資家ジョージ・ソロスを名指しで「ごろつき」と罵りました。

 

そしてマハティール氏はIMF救済策がいかなる事態を招くのかを見抜き「世界の常識」に抗ってIMFに楯突いたのです。

 

当初は変人として扱われ、国内外から非難を浴びましたが、結果が全てを物語っています。彼は独自路線の経済政策をとることでマレーシア国民を守ったのです。

 

マハティール氏は外資から国益を守る経験と知恵を持った人物だからこそTPPにも消極的な姿勢を見せているのです。

 

同氏はこのようにも語っています。

 

「TPPではISD条項を一番心配している。マレーシアにはISD条項で米国と闘えるだけの法律家の人材もないし、それだけのお金もない。国が米国の企業から金銭的にも略奪されるだけだ」(出典:『アメリカも批准できないTPP協定の内容は、こうだった!』著者:山田正彦 出版:サイゾー)

 

やはりTPPの焦点はISD条項にあるようです。

(ISD条項の問題点についてはこちら→「新経済協定TPP11(CPTPP)のメリットとデメリット」)

 

IMFの救済支援もその代償として新自由主義を受け入れさせ多国籍企業の餌食になりますが、TPPにおいてはまた少しアプローチを変えて新自由主義グローバル市場における貿易から多国籍企業が経済的侵略を始めます。

 

なにせ、IMF(と世界銀行)は、ロスチャイルド、ロックフェラーを筆頭とする国際金融資本家たちが国連の専門機関として創った組織で、TPPもまた同じような国際金融資本家ないし多国籍企業の意向からつくられた貿易協定ですから。

 

マハティール氏はそういった影なる存在に対して距離を取っているのかもしれません。どちらにせよ、多国籍企業による経済侵略を憂慮していることは確かです。

 

アジア通貨危機からマレーシアを救ったマハティール氏は次なる危機の TPPに対してどのような対策を打つのでしょうか。今後の動きに注目です。

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